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  • 投稿の最終変更日:2024年8月16日
  • 投稿カテゴリー:コラム
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これは都下のとあるコイン式駐輪場で見かけた「注意書き」です。曰く、特殊な形状の自転車は利用できない、と。そして次のような例が挙げられていました。

ここに挙げられているような自転車は、果たして本当に「特殊」なのでしょうか。

MTB(マウンテンバイク)やファットバイクだって街中の移動に使われます。確かに絶対数は少ないかもしれません。しかし、災害時の移動用にMTBやファットバイクを導入する自治体するある昨今、これらのタイヤが太い自転車は、本当に「特殊」と片付けられてしまってよいのでしょうか。

リンク: 消防ファットバイク隊 – 大和市

リンク: 全国初!悪路走行に適した自転車のチームを編成!「消防FATBIKE隊」発足

リンク: 災害用自転車(マウンテンバイク)42台が寄贈されました。

八幡浜地区施設事務組合の消防本部が、マウンテンバイク(MTB)で災害現場に駆けつける「MTB隊」を発足させた。

情報源: 愛媛)自転車で災害現場へ 八幡浜消防がMTB隊発足:朝日新聞デジタル

現在、順次各分団へ配置されているマウンテンバイクは、去る8月11日に行われた深川八幡子供連合祭の警戒においても大活躍しました。

情報源: 消防団配置のマウンテンバイク活躍 – 深川消防団

photo_ホダカ

上記画像初出記事はこちら

MTBで街中を移動する人は「特殊」なのでしょうか。それどころか、ちょっとタイヤが太めの子供乗せ電動アシスト自転車すら「特殊」と決めつけ拒否する駐輪場があります。

そして、三輪の自転車も「特殊」のなかまです。

photo_ブリヂストンサイクル

シニア向けの後ろ三輪「フロンティアラクットワゴン」。

三輪自転車も確かに絶対数は少ないですが、昭和の時代から確実に存在しています。また、シニアのための移動手段や、街中での運搬業務など、いくつかの場面で三輪自転車は活躍し、大きく期待されているのも事実です。

photo_豊田トライク

前二輪の「豊田トライク」。

これあの三輪自転車も「特殊」と片付けられてしまっています(もちろん、ありふれた自転車だとは言いません)。

驚くことに小径車も「特殊」の仲間です。そんなに特殊でしょうか。ミニベロや子供車は「特殊」であり、駐輪が制限されるのが当たり前なのでしょうか。

極め付けは「幅狭」。

しかし、このような制限が書かれているコイン式駐輪場、決して少なくありません。今回写真を撮った駐輪場も、大手の「EcoStation21」です。

また、他社が運営している駐輪場でも、三輪自転車は明確に否定されています。まぁ、ラック式である以上理解はできますが。



これらの自転車が特殊であるならば、例えば日本において荷物を運ぶのに適したカーゴバイクの普及など夢のまた夢——かもしれません。

Santa Cruz cargo bike ride

自転車駐輪場がこのようになってしまった理由はなんでしょうか。私は、スペース効率を高めた結果ではないかと推測しています。二段式にした場合、上段のことを考えればスタンドを使わずに駐輪できるラックは確かに便利です。平置きでも、隣り合うラックに高低差をつけることでハンドル位置が重ならず、横幅を詰めることができます。

 

少し高くなったほうはスタンドを出しても接地しませんから、「自転車をラックの溝の上で自立させる」というのは、確かに答えのひとつでしょう。そうなっているからこそ、スタンドのないスポーツサイクルでも駐輪できていることも、忘れてはなりません。

しかし、やはり。

タイヤの太い自転車や三輪自転車などが「特殊」と括られ、駐輪できる場所が提供されない現状は、なんとかしたいものです。とくに三輪自転車に関しては、細街路まで入り込めるエコな運搬手段として、シニアのための交通手段としてなど、大きな期待が寄せられています。

ところが、「特殊」と括られ駐輪できる場所が制限された自転車は、その普及までも妨げられているのが現状です。

車で言えば全高1.5m以上はダメ、3ナンバーもダメな駐車場ばかりなのと同じです。求められているのは、「三輪自転車にも対応する駐輪場」を作ること——というよりも、三輪自転車も含めて、もう少し「自転車の多様性」に配慮した駐輪環境の整備ではないでしょうか。

今から5年半前の記事になりますが、東京・二子玉川にある「二子玉川RISE」の駐輪場を見に行った際、もっとも感心したのがこちらです。

二子玉川RISEには、ラック式と、スタンドを出して使うタイプとが併設されています。

そしてもうひとつ。

こちらは、同じ年の代々木駅付近です。前輪を挟んで自立させることもできるし、スタンドを出して駐輪することもできます。

※どちらも現況を保証するものではありません

そーそー、そーゆーこと。しかもこの駐輪場も運営管理は「EcoStation21」。やればできるんじゃないか……にも関わらず「あれはダメ、これはダメ」という駐輪場も相変わらず新規設置されているのが、とても残念に思えます。

(SUGAI Gen)

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