2015年9月以来久しぶりに、ドコモバイクシェアの自転車シェアリングサービスを利用しました。以前より進化して便利になった点もある一方で「ここは頑張ってもらわないとな」と思うことも多々ありました。
◯:都内10区ならどこで借りてどこへ返してもOK
まず、2015年9月と比べて便利になっている点は、サービス提供エリアの拡大です。
ドコモバイクシェアの仕組みを使った自転車シェアリングは、2019年5月現在、千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、目黒区、大田区、渋谷区の10区で相互利用が可能、つまりこの10区であれば、どこで借りて、どこで返却してもOKです。
今回私は、京王井の頭線・駒場東大駅近くの「駒場野公園」にあるポートで自転車を借りました。今まで恥ずかしながら駒場東大前がどの区だか意識したことがなかったのですが、改めて確認すると目黒区でした。そして、返却したのはJR中央線・信濃町駅近くの「明治記念館西」ポートで、こちらは港区です。
本当は区単位ではなく都が運営してくれればありがたいのですが、各区のエリアを越えて利用できることで、利便性は確保されています。
ただし、それ以外の面での進歩は「あまり見られないな」というのが、正直な感想でした。
×:自転車を借りる手順はイマイチ
というわけで、「ここは頑張ってもらわないとな」と思う点としてまず最初に挙げたいのが、自転車を借りる手順です。
最近は自転車シェアリングの認知度も上がっているようで、人気のあるポート、利用者の多い時間帯においては自転車が出払ってしまっていることもあります。ドコモバイクシェアのアプリには目当てのポートにある自転車を予約する機能があるので(20分以内に利用開始する必要あり)、ぜひ使いたいところ。
しかし。
マップで駐輪場を選択すると、現在借りられる自転車の台数が出てきます。ここまでは、良い。
次の画面でこうやって自転車の番号がズラッと出てきて、タップしたら即予約完了なんです。自転車についての情報は、何も知ることができません。最大の問題は、バッテリー残量がわからない状態で予約させる点にあります。
今回私は、とりあえず予約せずにポートに向かいました。
交通系ICカードをドコモバイクシェアの会員証として登録すると、ポートにある自転車の操作パネルにかざすことで利用できるのですが、かといって交通系ICで決済できるわけでもないので、私は登録していません。
Webから会員登録してクレジットカード情報も登録すれば、会員証なしでも利用できます。その場合は、ポートで実際に自転車をチェックして、その場で予約手続きをし、発行されたパスコードを自転車の操作パネルに入力することで借りられます。
×:バッテリー残量が少ない自転車ばかりだった
ポートに着いたら、まずはバッテリー残量チェックです。アプリでチェックした際は現在借りられる自転車の台数が「8台」とありましたが、ポートには13台ありました。誤差は予約済みのものと、ポートにあるけど使えない状態の自転車によるものでしょう。
こちらの自転車は「9%」。
こちらは「0%」。空っぽじゃないか! これは利用可能台数に含まれていないと信じたいですね。
こちらは「18%」。30分くらいなら十分使えそうですが、この日の私は予定をはっきりと決めていなかったので、もう少し余裕が欲しい……。
そしてなんと、最後にチェックした自転車のバッテリー残量が「40%」でした。これなら行ける!ということで、もたもたしていると他の人に予約されてしまうかもしれないので、写真も撮らずに手続きをして借りることにしました。
とりあえず走り出してみると——うわぁ、走りが重たい。
×:小さなサイズの自転車は万人向けとは言い難い
「ここは頑張ってもらわないとな」と思う点として挙げる2点目は、この「走りの重さ」です。ただ単に重いのではなく、いくつかの原因があります。また、すべての自転車に当てはまるわけではありません。
今回借りたのは、ブリヂストンサイクルの「アシスタユニ 20インチ」をベースとしたと思われる自転車です。
実は2015年9月に港区自転車シェアリングを利用した際、同じくブリヂストンサイクルの「ビッケ ツー e」をベースとした自転車に乗った後で、私は『アシスタユニ 20インチほうが向いてるんじゃないか』と書いているんですね。
関連記事: 港区自転車シェアリングを使う – CyclingEX
実際に乗ってみて、あえて電源を切ってペダルをこいだ際にはビッケ ツー eよりも車体が軽いのが活きているなとは思いました。しかし今回は、バッテリー残量が心許ないのです。ディスプレイにはオートエコモードで23km走行可能と表示されていましたが、強モードでは15kmを切っていました。そしてこれが、悪い方向へと作用しました。
アシスタユニ20ベースと思われるこの自転車、サドルがめちゃくちゃ低いんです。小柄な人に合わせてデザインされているのでしょう。それでいて重量は明らかに20kg以上あり、身長183cmの筆者がふつうに乗ろうとするとすぐにヒザが痛くなります。
アシストパワーに頼った走り方をすれば、少しはヒザへの負担を和らげることはできます。ところが今回の場合は、バッテリー残量に不安があるからアシストパワーには頼れないんです。オートエコモードメインで、上り坂だけ標準モードや強モードにしてみましたが、やっぱり重たく感じますし、ヒザも痛くなりました。
これ、ユニバーサル設計ではなくて「小柄な人のための自転車」です。アシスタユニ 20インチの名誉のために書いておくと、小柄で、かつ「ドカンとアシストが効くような自転車は怖い」という方には向いている電動アシスト自転車だと思いますが。
整理しますと、
自転車が小柄な人に特化している
↓
つまり背が高いと漕ぎにくい自転車
↓
アシストパワーに頼ればなんとかなるけど
↓
バッテリー残量が少ないのでなんともならない
↓
仕方なくオートエコモードで走るも重いわヒザ痛いわ
……というわけです。
ただし、繰り返しになりますが、すべての自転車に当てはまるわけではありません。実はドコモバイクシェアに導入される自転車も、進化していました。
◯:Panasonicの第2世代自転車は乗りやすい
都内を歩いていて、ドコモバイクシェアの自転車を見ない日はありません。そしてある時期から、Panasonic(パナソニックサイクルテック)の新しいタイプが導入されていることには、気づいていました。
別のタイミングでそちらの自転車も借りることができたので、紹介しておきましょう。
ドコモバイクシェアにはPanasonicの「グリッター」ベースと思われる自転車が導入されていましたが、上の写真はその後継となる自転車です。ぱっと見は同社の「SW」に似ているのですが、よく見ると長さが全然違うことがわかります。
新宿のとあるポートでバッテリー残量70%のこいつを見つけたときは、小躍りしました。
それはさておき、「SW」は操作ボタンが電源オン/オフしかなく、アシストモードもオートマチックだけのシンプルなモデル。対してドコモバイクシェアに導入されているこちらの自転車は、ちゃんとロング/オートマチック/パワーの3モードを搭載しています。バッテリーも、SWとは異なります。
そう、該当する市販モデルが存在しないのです。
上記リンク先によれば『大柄な外国人観光客の方でも余裕を持って運転できるように配慮』したとのことで、サドル高の調整範囲も大きく取られています。身長183cm(ただし足は短め)の私で踵が少し浮くくらいまで高くできます。しかもストッパーがついているようで、シートポストが抜けないようになっていました。
オートライトが搭載されていました。停止時でも点灯するので安心です。
実際に走り出してみると、漕ぎ出しのアシストはどのモードも少しマイルドに感じますが、怖さを感じないという意味では良いでしょう。そして、サドル高がちゃんと出せているという理由もあるのですが、スムーズにペダリングができ、アシストパワーを得ながら快適に巡行可能です。車体のしっかり感や直進安定性も十分で、のんびりでも、しっかりとスピードを出しても、思いのほか乗っていて楽しい自転車だと感じました。
ちゃんと巡航できるということは、交通機関としてしっかり役目を果たせるということでもあるのです。ただ、これは「×」な点と表裏一体だと感じました。
×:利用者のモラルに問題あり
近頃都内で頻繁に見かけるドコモバイクシェアの赤い自転車ですが、おせじにも利用者のモラルが高いとは言い難いと感じます。ドコモバイクシェアのユーザーが飛び抜けてそうである……とは思いませんが、何せ赤い車体が目立つのです。
とくに上で紹介した新しいPanasonic製の自転車はもちろん、グリッターがベースと思われる自転車(私は乗ったことがありませんが)も、巡航性能にも優れているようで、それが結果として「歩道を爆走するドコモの赤チャリ」を生んでいるのではないかと、感じないわけでもありません。車道を逆走しているユーザーも、毎日のように見かけます。
問題の根本は交通教育と交通行政にあるのですが、自転車シェアリングを提供する自治体やドコモバイクシェアの側でも、まだまだできることがあるはずです。
ドコモバイクシェアのアプリではよく安全啓発の通知が届くのですが、そのような通知を配信するだけでユーザーのモラルが向上するのなら、世の中のありとあらゆる問題が解決できてしまいます。
ドコモバイクシェアの自転車を借りて、乗って、返す——その一連の流れの中で、ユーザーが自然と交通ルールを遵守するような仕組みが必要です。
おわりに:ドコモバイクシェアとPanasonicの協業に期待
2015年9月に利用した際と比べると便利になったと感じる点もありつつ、一方で進化のスピードが遅いなと感じるの事実です。
Panasonicサイクルテックは2019年より、「IoT自転車」を開発し、自転車シェアリングサービスに投入するべく実証実験を開始しています。
このような取り組みが行われ、ドコモグループとパナソニックグループの協業がより深まっていけば、先に挙げたような「×」は飛躍的に改善されていく——かもしれません。
もちろん私は、期待しています。
情報源: IoT電動アシスト自転車を開発、実証実験開始 | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan
(Gen SUGAI)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。