最近気がついたのですが、Googleさんによりますと、日本においては「MTB」というアルファベット3文字よりも「マウンテンバイク」というカタカナのほうが、多く検索されているようです。
その「マウンテンバイク」なんですけど、言葉を聞いてみなさんがイメージするのはどんな自転車でしょうか。オフロードを走る自転車であることは、みんな知っているでしょう。街中で道行く人に聞いたら、きっと「タイヤが太い」とか「フロントサスペンションがある」とか、そんなところではないでしょうか。でも実際、マウンテンバイクと言っても実にいろいろな種類があります。
クロスバイクやロードバイクばかりはやっているように見える昨今ですが、これからマウンテンバイクに乗ってみたいと思う方のために「マウンテンバイクの種類」について、大雑把に説明してみたいと思います。
●クロスカントリー(XC)
リンク: XR9|製品|ブリヂストンのスポーツバイク アンカー|anchor
平地もあればアップダウンもあるオフロードで競う、「クロスカントリー」レース向けのマウンテンバイク。シリアスなレーサーのみなさんが使うバイクは、軽量カーボンフレームが当たり前です。フロントサスのみのハードテールと、フルサスペンション(前後サス付き)のものがあります。サスペンションのストローク量は100mm前後です。
リンク: Top Fuel 9.8 SL – Trek Bicycle
一方でエントリー〜ミドルグレードは、ふだんのサイクリングにもぴったりです。サイクリングロードなどで見かける「ちょっと高そうなマウンテンバイク」は、このジャンルが多いのではないでしょうか。
ちなみにここに掲載したのは、どちらも結構なお値段の上位モデルですが……。
●ダウンヒル(DH)
リンク: Session 27.5 Carbon Frameset – Trek Bicycle
文字どおり、ダウンヒル(DH)競技のためのバイク。山の斜面などに作られた急な下り坂を激走するレース(もしくは遊び)のために作られています。
リンク: 2016 Giant Bicycle [GLORY ADVANCED 27.5 0]
大きな衝撃に耐えられるように、前後にストローク量の多い(180〜200mmくらい)サスペンションを持ちます。基本的には、スキー場のサマーシーズン営業等でやっているような専用コースで乗るもの。山の上まではリフトやゴンドラで行くので、上りの性能は考慮されません。
さすがに街乗りはできませんね(大昔に流行ったらしいですけどね!)
●フリーライド(FR)
リンク: VOLTAGE FR 730 | SCOTT JAPAN
ダウンヒルと同じような激しい下り坂を走るけれど、レースよりも「遊び」がメイン、下り一辺倒というわけではなくて、少しは登り坂も自分で走る……といったようなジャンル。多少の登り坂は走れるパーツ構成になっています。サスペンションのストローク量は160〜180mmくらいといったところでしょうか。
板で作られたジャンプ台や障害物をこなしてエアを競う「スロープスタイル」というものもあり、そちらは競技色もあり、やや特化したマウンテンバイクがあります。
●エンデューロ
リンク: 2016 Giant Bicycle [REIGN 27.5 2]
オートバイのエンデューロレースや、ラリーをイメージすると分かりやすいかもしれません。タイムを計測する区間と、次の計測区間に移動するためのリエゾン区間があるエンデューロレースを視野に入れたマウンテンバイクです。
リンク: SANCTION EXPERT | GT公式サイト | ジーティー MTB
マウンテンバイクで「エンデューロ」と言うと、タイム計測の区間はだいたい下り坂なのですが、多少上りがあったり、リエゾン区間が上り坂だったりするので、下るための性能は大事だけど、上りも(フリーライドバイクよりももうちょっと)こなせる仕様になっています。サスペンションのストローク量は160mmくらい。
エンデューロは、ここ数年のジャンル。先述の「フリーライド」や後述の「オールマウンテン」と重なる部分が多く、実際「エンデューロ/オールマウンテン」というような言い方をしているメーカーもあります。
●ダートジャンプ
リンク: スペシャライズド・ジャパン:P.3
土を固めたコースやスケートパーク等、そしてときには街中(やりすぎると怒られます)で、ジャンプをしたりエアを競ったりするジャンル。BMX(バイシクルモトクロス)と重なるジャンルです。ジャンプの後の着地では大きな衝撃を受けるので、フレームは丈夫に作られています。
フリーライドのところで「スロープスタイル」について触れましたが、ダートジャンプ用のマウンテンバイク側からスロープスタイルにアプローチしたモデルもあります。
シンプルにするために、BMX同様シングルスピードであることが多いです。
●オールマウンテン
リンク: スペシャライズド・ジャパン:STUMPJUMPER FSR COMP CARBON 650B
何かに特化するわけではなく、あらゆる地形をカバーするマウンテンバイク。自宅からマウンテンバイクに上り、オフロードに入ってえっちらおっちら坂を上り、頂上で一休みしてから下りを楽しみ、そしてまた上って……と、山道を楽しむにはもっとも現実的な選択です。
リンク: EXPLOSIF | KONAWORLD | カナダノースショアのMTBブランドKONA
最近は「トレイルバイク」という呼び方が多いような気がします。サスペンションのストローク量は120〜160mmほど。フルサスペンションもあれば、ハードテールもあります。
また、オールマウンテンの入門モデルは、クロスカントリーの入門モデル同様に、街でもよく見かける存在です。
だいたい、こんなところでしょうか。「4Xがない!」とか「ツーリング用MTBもあるよね」「ファットバイクもMTBだろ」といった声もあるかと思いますが、キリがなくなるので、ひとまず以上で。
実際のところ、遊び方が増えていけばマウンテンバイクのジャンルも増えていきますし、「こういうバイクはこのジャンルに当てはめなければならない」と言ったような決まりはありません。これからマウンテンバイクをやってみたいと思っている方は、自分がどんなふうに楽しみたいかを想像し、そして「こんなジャンルがあるんだな〜」というくらいに思ってもらえれば幸いです。
ちなみに筆者が今個人的に所有しているマウンテンバイクは、MERIDA(メリダ)のクロスカントリーモデルです。
実は最近、街乗り用のクロスバイク以外では、このマウンテンバイクがいちばん稼働しています。舗装路しか走らないときでも、マウンテンバイク。うまく説明できないけど、なんだか楽しいんですよね。
(Gen SUGAI)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。