これからスポーツ自転車を購入しようという人が、いろいろ調べて「どうやらクロスバイクというジャンルが良いらしい」と知り、さらに調べて行き着く自転車がGIANT(ジャイアント)の「ESCAPE R」や「ESCAPE RX」といったクロスバイクではないでしょうか。
しかし、世の中には数多くのクロスバイクがある上に、GIANTのクロスバイクだけでも実にたくさんの種類があり、初めての人にとっては何が何やら……ということになってしまいます。そこで、各製品の違いを紹介してみようというのが、この記事の趣旨です。
近年恒例になりつつあるのですが、その2016年モデル版……ということで。
[2016/10/07追記] 2017年モデル版できました。ESCAPE USERSにて公開中です。
関連記事: 2017年モデル版:これからクロスバイクが欲しいという人のために、GIANT ESCAPE R/RX/CROSTAR/GRAVIERの違いをおさらいする – ESCAPE USERS
[追記ここまで]
そもそもクロスバイクとはどんな自転車か?ということについては、下記の記事をお読みください。
関連記事: あなたにおすすめなのはどのタイプ?2016年モデル版・初心者のためのクロスバイクの見分け方・選び方
GIANTの2016年モデルでは、どんなクロスバイクがラインナップされているのかをおさらいします。
・ESCAPE R3
・ESCAPE AIR
・ESCAPE RX1/2/3
・GRAVIER(グラビエ)
では、各シリーズの違いを見ていきましょう。
●「ESCAPE R3」はタイヤが細めで軽いクロスバイクの定番にしてスタンダード
軽量なアルミフレームに、ロードバイクと同じ700Cと呼ばれるホイール径に28mm幅のタイヤ、つまり「700×28C」のタイヤを装着したクロスバイク。今でこそこういう構成のクロスバイクは多いのですが、約10年前に登場し、日本にこのような「スピード系」のクロスバイクを定着させた立役者が、このESCAPE R3です。
2015年モデルで、10年目にして初めてのフルモデルチェンジを実施、より軽く快適なクロスバイクに仕上がっています。その重量は、10kgちょっと(465mmサイズで10.2kg)。シティサイクルが、カゴや荷台がなくても15kgはすることを考えると、相当軽いです。
ESCAPE R3の特徴は、ハンドルが近め&高めで、ビギナーでもリラックスした乗車姿勢を取ることができること。はじめてスポーツ自転車に乗る人、自転車に乗ること自体が久しぶりの人でも、自然となじむことができるでしょう。
そして、この後紹介するクロスバイクは、このESCAPE R3の思想を発展させたもの。つまりESCAPE R3は、GIANTのクロスバイクにおける「スタンダード」なのです。
なお、女性向けとして「ESCAPE R3 W」と「Liv FREEDA」があります。
関連記事: 定番クロスバイクGIANT ESCAPE R 3とLiv FREEDAの2016年モデルが登場 | CyclingEX
関連記事: 2016年モデル紹介:女性向けブランド「Liv」に追加された「ESCAPE R3 W」 | ESCAPE USERS
[2016/5/20追記]早くもR3の2017年モデルが登場しています。
関連記事: GIANT ESCAPE R3に2017年モデルが登場、価格は税別50,000円 – CyclingEX
●「ESCAPE AIR」はタウンライドで威力を発揮する軽さと上質感が魅力
ESCAPE R3は十分に軽い自転車です。2015年モデルから、さらに軽くなっています。しかし、そのESCAPE R3よりももっと軽いのが、このESCAPE AIRです。この軽さは、街乗りで圧倒的なアドバンテージとなります。
タイヤのサイズはR3と同じ700×28Cで、ESCAPE R3と同じ。デザインや乗車姿勢なども、ESCAPE R3と同様ですが、フレームや各パーツを見直して徹底した軽量化を行って登場したのが2012年。その後、ESCAPE R3もモデルチェンジしたことで重量差は縮まっていますが、それでも465mmサイズで9.6kgと、10kgを切るクロスバイクです。
ESCAPE AIRは、フロントギアが2段になっています。R3はフロントギアが3段でリアは8段、AIRは2段×9段という違いです。AIRのギア構成でも急坂はこなせますから、シンプルさを求めるならAIRのほうが良いかもしれません。
AIRはマットカラーを採用していて、R3とは違った上質感を見せています。この点も、選択のポイントとなるかもしれません。
●「ESCAPE RX」はロードバイクに匹敵する本格的なスポーツ性能を持つ
ESCAPE Rの基本設計を受け継ぎながら、シャープな乗り味を持たせたスポーツモデルがESCAPE RXシリーズです。その性能は、エントリーモデルのアルミロードバイクに匹敵。それでいて、クロスバイクとしての扱いやすさはしっかりと残されています。
ESCAPE RXシリーズは意外とモデルチェンジが多くて、初代の登場が2011年モデル、2014年モデルで2代目になり、そして2016年モデルが3代目。「シャープな乗り味」は踏襲しつつ、より軽く、より快適なクロスバイクを目指して3代目が登場しました。
そして2016年モデルならではの特徴として「ハンドルが少し遠くなった」ことが挙げられます。ESCAPEと名のつくクロスバイクは、一貫して「ハンドルは近く、高く」という設計でした。ハンドルが遠くなったということは、乗車したときに(よりスポーツ走行に適した)前傾姿勢になるということです。
ESCAPE RやAIRとのキャラクターの違いが、よりはっきりしたと言えるでしょう。
なお、女性向けのESCAPE RXシリーズは現在ラインナップにはありませんが、近いモデルとして「Liv THRIVE」があります。
関連記事: GIANT 2016年モデル:新設計のフレームにTIAGRAを搭載したスポーティなクロスバイク「ESCAPE RX 1」 | CyclingEX
関連記事: GIANT 2016年モデル:新型フレームを得たスポーツクロスの決定版「ESCAPE RX 2」&「RX 3」 | CyclingEX
関連記事: 2016年モデル紹介:フィットネスとして自転車を楽しみたい女性のための「Liv THRIVE」 | ESCAPE USERS
[2016/7/6 追記]ESCAPE RXシリーズ 2017年モデルが登場しています。
関連記事: GIANT 2017年モデル:スポーティーな走りを楽しめるクロスバイク「ESCAPE RXシリーズ」は最初の1台にもセカンドバイクにもぴったり – CyclingEX
●「GRAVIER」はESCAPE Rゆずりの軽快さに太めのタイヤで安定感をプラス
写真で見るとESCAPE R3やAIRとよく似ている、GRAVIER(グラビエ)。この自転車の最大の特徴は、27.5×1.5インチのタイヤを装着している点にあります。27.5インチという径は、26インチと700Cの中間。そして1.5インチ(約40mm)と幅があるタイヤです。
ESCAPE R/AIR/RXの700×28C(28mm)というタイヤサイズは、ロードバイクよりは太いけれど、他ブランドの一般的なクロスバイクよりは細めで、もちろんシティサイクルよりも細いもの。これは「ESCAPE」を名乗るクロスバイクの軽快さを決定づける重要なポイントですが、ビギナーにとっては「細くて不安」に感じることも事実。
また、街中には意外と舗装の段差がありますし、首都圏でもちょっと郊外に行けば、舗装が荒れたところや、川沿いの砂利道なんかに遭遇することがあります。そんなときはやっぱり、ちょっと太めのタイヤの方が安心感があるんですよね。それに、タイヤが太いほうが乗り心地もよくなります。
つまり、ESCAPE R3の軽快さはそのままに、細めのタイヤでは不安なシチュエーションをものともしない安定感・安心感を備えたのが、このGRAVIERというわけです。
通勤通学等でスポーツサイクルを使い、ルートの途中に河川敷のフラットダートがあっても迂回せずに最短距離で行きたい!なんて人には、ESCAPE系より安心感があって良いかと思います。ただ、タイヤやチューブの入手性は700Cに比べると若干劣りますので、その点だけご注意を。
関連記事: 2016年モデル紹介:27.5インチで太めのタイヤを採用し走りの幅を広げた「GRAVIER」 | ESCAPE USERS
●実車を見て違いを知りたいならジャイアントストアがおすすめ
GIANTのブランドストア「ジャイアントストア」が、日本各地にできつつあります。GIANTのクロスバイクについて詳しく知りたい、実車を見たいと思ったら、やはりブランドストアに足を運ぶのがいちばんです。ショップによっては、試乗車で乗り比べることもできます。
近くにジャイアントストアが無い場合は、GPS(ジャイアントパートナーストア)/GSI(ジャイアントストアインサイド)/GPD(ジャイアントプレミアムディーラー)がおすすめです。
リンク: 2016 Giant Bicycle [ Dealers ]
それ以外のショップであれば、ショップのWebサイトやブログ等を見て、クロスバイクについてしっかり紹介されているかどうかを見ると、良いと思います。
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以上、GIANTのクロスバイク解説、2016年モデル版でした。2016年春のシーズンまでに、実走インプレッションも掲載したいと思うのですが、果たして……。
リンク: GIANT
関連記事: クロスバイク定番対決!GIANT ESCAPE R3とBRIDGESTONE CYLVA F24を比較する – CyclingEX
(Gen SUGAI)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。
ピンバック: これからクロスバイクが欲しいという人のために、GIANT ESCAPE R/AIR/RX、そしてGRAVIERの違いをおさらいしてみる(2015) | CyclingEX