ブリヂストンサイクルのレーシングブランド「ANCHOR(アンカー)」がかたくなに守り続けているもの、それが「ネオコット・クロモリ」です。
クロモリフレームの性能を最大限に高めるために開発されたフレームは、カーボン全盛の現代においては「レースの第一線から身を引いている」のは事実ですが、アンカー、そしてブリヂストンが有しているレーシングスピリットやものづくりの精神を現代に受け継ぐ存在と言えるでしょう。
●RNC7
ネオコットといえば、やはりこのカタチ。ANCHORブランドが立ち上がる前から存在するロードレーサーです。ネオコット(NEO-COT)とは、ブリヂストンサイクルが開発した、フレーム形状の最適化理論。フレームのどこにどんな力がかかっているのかを突き詰めた結果、「丸パイプではない」フレームが生まれました。
「こういう形状が良い」とわかっても、作ることができなければ意味がありません。このカタチを実現しているのが、パイプの厚みを無段階で変化させる「スピニングバテッド」、そしてもうひとつが流れるようなフォルムを生み出している「バルジ成形」で、金型にセットしたチューブの内側にオイルで圧力をかけることで、このチューブ形状が生まれています。
デビュー当時と比較すると少しリアセンターが長くなっていますが、90年代の「最新ロードレーサー」の姿を現代に伝えています。今ではロングライドの相棒として乗っている人が多いと思いますが、ジオメトリーはハンドルが低いバリバリのレーサーなので、その点は考慮しておく必要があります。
2016年モデルでは、シマノ・RNC7 EQUIPEが250,000円(税別)、フレームセットのRNC7 FRAMEが160,000円(税別)です。
●RNC3
RNC7のチューブが「ネオコット・クロモリ・プロフェッショナル」と呼ばれるの対して「ネオコット・クロモリ・スタンダード」を名乗るのが、RNC3です。
チューブの加工を簡略化して、溶接も一般的なTIG溶接となっています。エンドがプレス成形になっていたり、ユニクラウンのクロモリフォークがセットされていたりと、コストダウンが見て取れるのも事実。
一方で、RNC7と比べてトップチューブは短く、ヘッドチューブは短く設定されており、前傾姿勢に慣れていないビギナーでもポジションが出しやすいフレームとなっています。リヤセンターも少し長めになっているのが特徴です。
ネオコット・クロモリが純レーシングフレームとしての役割を終えていることを考えれば、設計面でも価格面でも、RNC3のほうが「みんなのネオコット」と言えるのではないでしょうか。
2016年モデルでは、シマノ・105完成車のRNC3 EQIPEが195,000円(税別)、シマノ・ソラ完成車のRNC3 EXが140,000円(税別)、フレームセットのRNC3 FRAMEが95,000円という展開です。
●XNC7
ネオコット・クロモリはロードバイクだけのものではありません。MTBでは、2000年に鈴木雷太さんがネオコット・クロモリのMTBでシドニー五輪を走っています。
長い間、26インチのXCバイクだったネオコット・クロモリのMTBですが、2015年モデルから、650B(27.5インチ)にモデルチェンジしています。
ネオコット・クロモリの乗り味はそのままに、650Bのハードテールを……と書くのは簡単ですが、ネオコット・クロモリフレームの新規モデル開発は久々だったこともあり、苦労も多かったようです。金型も作らなくてはいけませんし、開発コストもかなりのものだったはず。
しかし、今のうちにネオコット・クロモリの新規開発をやっておかないと、技術が失われてしまうという危機感もあったと聞きます。
関連記事: 27.5インチ(650B)にモデルチェンジ!ネオコットクロモリMTB「ANCHOR XNC7」 | CyclingEX
2016年モデルのXNC7は、シマノ・XT完成車のXNC7 ELITEが360,000円(税別)、シマノ・SLX完成車のXNC7 EQUIPEが250,000円(税別)、フレームセット(フォーク無し)のXNC7 FRAMEが180,000円(税別)となっています。
これらのネオコット・クロモリフレームは、もちろんメイド・イン・ジャパン。埼玉県上尾市にある、ブリヂストンサイクルの工場で製造されています。
(Gen SUGAI)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。