NHKニュースで「自転車“ながら運転” 11月から法律で禁止 罰則科されることに」と伝えられていました。記事の内容だと、現行法でまるで罰則がなかったように思えてしまうので、現行法と改正法を比較してみました。

携帯電話を使用しながら自転車を運転する、いわゆる「ながら運転」について、ことし11月1日から法律で禁止され罰則が科されることになりました。 携帯電話を使用しながら自転車を運転する、いわゆる「ながら運転」が後を絶たないことから、ことし5月に成立した改正道路交通法では、「ながら運転」を禁止し、新たに罰則が設けられました。

情報源: スマホ 携帯電話の自転車“ながら運転” 11月1日から法律で禁止 罰則が科されることに | NHK | 事故

結論から言うと現行法でも罰則はあります。ただし、軽いです。2024年11月に改正道交法が施行されると、罰則が重くなり、根拠となる道交法の条文も変わります

自転車に乗って「ながらスマホ」をすると現行法では「5万円以下の罰金」であるところ、2024年11月からは、交通の危険を生じさせた場合に「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」、スマホを手に持ち画像を注視した場合は「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金」になります。

警察はこう案内する

まず、埼玉県警の周知がわかりやすかったので、紹介します。

令和6年5月24日に道路交通法の一部を改正する法律が公布され、自転車の運転中における携帯電話使用等(いわゆる「ながら運転」)及び自転車の酒気帯び運転等の罰則規定が整備されます。(6月以内に施行)
自転車の運転中における携帯電話使用等(いわゆる「ながら運転」)について
現行
罰則:5万円以下の罰金(埼玉県公安委員会規則)
改正後
主に交通事故を発生させるなど、交通の危険を生じさせた場合
罰則:1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
上記以外で、手で携帯電話等を保持して、通話や表示された画像を注視した場合
罰則:6月以下の懲役又は10万円以下の罰金

情報源: 自転車のながら運転、酒気帯び運転の厳罰化 – 埼玉県警察

弁護士の解説を読む

続いて、弁護士の方による解説記事を見つけたので、紹介します。

スマホで通話をしたり、スマホの操作をしながら自転車に乗ることは違法なのでしょうか。 また、スマホを使用中に自転車事故を起こしてしまったときに、損害賠償請求における過失割合に影響するのでしょうか。 ここでは、自転車とスマホの使用について、法律上の問題点について解説していきます。

情報源: スマホを使用しながら自転車に乗ってもいいの? | 弁護士が自転車とスマホの違法性や過失について解説します

現行法では

ここからは、本稿執筆時点での現行法である道交法の条文を紹介しましょう。

なるべく簡単に説明すると、
道交法「各都道府県の公安委員会が定めるルールを守ってね。守らなかった場合の罰則もあるよ」
公安委員会の規則「自転車のながらスマホは禁止だよ」
……という構図。

本稿執筆段階での現行法、令和6年6月21日施行の道路交通法では、第七十一条にこう書かれています。

第七十一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
(中略)
五の五 自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第四号において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第一項第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第四号において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項
(罰則 第一号、第四号から第五号まで、第五号の三、第五号の四及び第六号については第百二十条第一項第十号 第二号、第二号の三及び第三号については第百十九条第一項第十五号 第五号の五については第百十七条の四第一項第二号、第百十八条第一項第四号)

自動車または原動機付自転車の「ながらスマホ」については、第七十一条五の五に書かれています。

では自転車はというと、第七十一条六が関係します。罰則については「第六号については第百二十条第一項第十号」とありますから、先にそちらも参照しましょう。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
(中略)
十 第七十一条(運転者の遵守事項)第一号、第四号から第五号まで、第五号の三、第五号の四若しくは第六号、第七十一条の二(自動車等の運転者の遵守事項)、第七十三条(妨害の禁止)(第七十五条の二十三(特定自動運行において交通事故があつた場合の措置)第六項において読み替えて準用する場合を含む。)、第七十六条(禁止行為)第四項又は第九十五条(免許証の携帯及び提示義務)第二項(第百七条の三(国際運転免許証等の携帯及び提示義務)後段において準用する場合を含む。)の規定に違反した者

情報源: 道路交通法 | e-Gov 法令検索 令和6年6月21日 施行

例:東京都道路交通規則では

そして、法の言う「道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」とは、各都道府県公安委員会の道路交通規則や道路交通法施行細則を指します。では、例として東京都道路交通規則ではどうか。

第8条 法第71条第6号の規定により、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)の運転者が遵守しなければならない事項は、次に掲げるとおりとする。
(中略)
(4) 自転車を運転するときは、携帯電話用装置を手で保持して通話し、又は画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。

情報源: 東京都道路交通規則

というわけで、やっと話がつながりました。

改正道交法では

現行法の第七十一条五の五において、自動車または原動機付自転車での「ながらスマホ」を禁止していたところ、改正道交法では自転車も加えられました

第七十一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
(中略)
五の五 自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第四号において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第一項第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第四号において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項
(罰則 第一号、第四号から第五号まで、第五号の三、第五号の四及び第六号については第百二十条第一項第十号 第二号、第二号の三及び第三号については第百十九条第一項第十五号 第五号の五については第百十七条の四第一項第二号、第百十八条第一項第四号)

罰則は「第五号の五については第百十七条の四第一項第二号、第百十八条第一項第四号」とあるので、そちらを見ましょう。

第百十七条の四 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
(中略)
 第七十一条(運転者の遵守事項)第五号の五の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者
(中略)
第百十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金に処する。
(中略)
 第七十一条(運転者の遵守事項)第五号の五の規定に違反して無線通話装置を通話のために使用し、又は自動車、原動機付自転車若しくは自転車に持ち込まれた画像表示用装置を手で保持してこれに表示された画像を注視した者(第百十七条の四第一項第二号に該当する者を除く。)

情報源: 道路交通法 | e-Gov 法令検索 (令和六年法律第五十九号)

今回は自転車での「ながらスマホ」にスポットを当てましたが、自転車の酒気帯び運転にしっかり罰則が設けられることも、インパクトがあると思いました。

こちらについては、もう一度、埼玉県警のリンクを紹介しておきます。

情報源: 自転車のながら運転、酒気帯び運転の厳罰化 – 埼玉県警察

(SUGAI Gen)

自転車が絡む読み物や自転車生活に役立つ商品の紹介を、新しい「CyclingEX」に掲載しています。