ここ最近、「サイクリング人口が10年で半減して……」という話を聞く機会が何度かありました。
きっかけはおそらく、この記事です。
情報源: サイクルスポーツ人口10年で半減も 地方自治体が「自転車観光」にすがりつく根本理由 | Merkmal(メルクマール)
ただ、上記記事で引用されている「レジャー白書」って、サンプル数が少ないと思うのです。
ちょっと気になって検索したら、こんな記事がありました。
情報源: ゴルフ「ミニブーム」で利用者増でも喜べない理由 | スポーツ | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
この記事では、総務省統計局が実施する「社会生活基本調査」も参照していました。レジャー白書と社会生活基本調査、どう違うでしょうか。
レジャー白書とは:
公益財団法人 日本生産性本部が、余暇活動状況について調査・分析し取りまとめたもの。977年の創刊以来、毎年発行されている。現時点での最新版「レジャー白書2022」のアンケート対象とサンプル数は下記のとおり。
なお、個人を対象とした余暇活動アンケート調査は、2022年1~2月にインターネットを通じて実施し、全国の15~79歳男女、3,211人から有効回答を得ました。
情報源: レジャー白書2022 | 調査研究・提言活動 | 公益財団法人日本生産性本部
社会生活基本調査とは:
総務省統計局による、統計法に基づく基幹統計『社会生活基本統計』を作成するための統計調査で、昭和51年以来5年ごとに実施。10回目にあたる令和3年調査の調査対象とサンプル数は下記のとおり。
指定する調査区(全国で約7,600調査区)内にある世帯のうちから、無作為に選定した約9万1千世帯の10歳以上の世帯員約19万人を対象としました。
情報源: 統計局ホームページ/令和3年社会生活基本調査の概要
レジャー白書より社会生活基本調査のほうが、「対象年齢が広い」「サンプル数が多い」という特徴があります。
なるほどねー。
では、サイクリング人口について、レジャー白書と社会生活基本調査、両方の数字を見ていきましょうか。せっかくなので、他のアウトドアやスポーツについても紹介しましょう。
ちなみに「レジャー白書2022」は図書館で閲覧しました。
社会生活基本調査は下記から各種データをダウンロードしました。
情報源: 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
どちらの調査も、調査項目は多岐に渡りますが、独断と偏見で、9項目を選んでいます(2つは異なる調査なので、完全に項目が一致するわけではないとご理解ください)。
『レジャー白書2022』より 参加人口の推移(万人)
『社会生活基本調査』より 行動者数(千人)
うーん、レジャー白書と社会生活基本調査を比較すると、結構違うなぁ。
「レジャー白書における2012年→2021年」と「社会生活基本調査における2011年→2021年」の、比較数値に着目しましょう。
レジャー白書では今回取り上げたすべてのアクティビティが減少していますが、ウォーキングはその減少幅が小さいです。一方、社会生活基本調査では「ウォーキング・軽い体操」と「ジョギング・マラソン」は増加しており、他は減少しています。
レジャー白書では、サイクリングは2012年→2021年で64%まで落ち込んでいます。しかし、社会生活基本調査の2011年→2021年では92%ですから、そこまで大幅な減少ではありません。
なお、冒頭でも紹介したメルクマールの記事にもあるとおり、レジャー白書2022によれば、スポーツ自転車の市場規模自体は、長期的に見れば拡大傾向です。
情報源: サイクルスポーツ人口10年で半減も 地方自治体が「自転車観光」にすがりつく根本理由 | Merkmal(メルクマール)
金持ちの趣味になっているのかもしれませんし、コアな人が増えているのかもしれませんし、その両方かもしれません。
そもそも、外遊び自体が漸減傾向なのではないか——とも感じます。一方で外遊び自体は多様化しているので、ひとつひとつのボリュームは、小さくなるのかもしれません。また、20年とか30年とか、スパンを変えるとまた話が違ってきたりもします。
結論:パッと目立つ数字をセンセーショナルに取り上げても、結局のところよくわからない。
[2022/4/17 追記]
続きを書きました。
(SUGAI Gen)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。