ここ数年増えてきているグラベルロードバイクですが、とくに最近は、グラベルロード以外にアドベンチャーロードと呼ばれるものも多くなり、さらにはエンデュランス系のロードバイクがより太いタイヤに対応するなど、多様化・細分化が進んでいます。
そこで今回は、グラベルもOKと謳うそれらスポーツ自転車の細かい分類について、手短かに解説してみます。
すでに発表になっている各メーカー・ブランドの2020年モデルを見回したところ、Felt(フェルト)がちょうどよいサンプルになりそうなので、同ブランドのラインナップを中心に紹介しましょう(他のブランドも出てくるよ)。
グラベルロードバイク
グラベル(gravel)とは、砂利のこと。その砂利道をハイスピードで駆け抜け、オンロードもロードバイクばりに巡航したい——そんな欲張りなニーズを満たすのが、グラベルロードバイクです。
Feltの2020年ラインナップですと「BREED(ブリード)30」がそれにあたります。
今、グラベルロードバイクと聞くと、ボトルケージ台座がいろいろなところに備わっているものを連想する人も少なくないかと思いますが、2010年代前半のグラベルロードバイクはそんなにボトルケージ台座だらけではなかったように思います。また、近年は「積載性勝負!」といったバイクは、後で紹介する「アドベンチャーロード」へと進化しています。
このFelt BREED 30も、ボトルケージ台座は確かにあちらこちらにあるのですが、ダウンチューブ下面にはありません。Felt自体は「グラベルレーサー」を謳っています。
情報源: Felt BREED | 30(ブリード | 30) | フェルト公式日本語Web | Felt公式日本語Web
関連記事: Felt 2020年モデル:アルミフレームのグラベルレーサー「BREED 30」が登場 – CyclingEX
アドベンチャーロードバイク
グラベルロードバイクは、オンロード/オフロードを問わず走行できるスポーツ自転車です。そうなると当然、未舗装路もこなせるツアラーとして使われるようになります。大型のサドルバッグヤフレームバッグを使ったバイクパッキングも、よく見受けられるようになりました。
そこで、よりツーリング志向に振ったのが「アドベンチャーロードバイク」です。グラベルロードバイクよりもさらにフレームが丈夫で、タイヤはより太いものに対応していることが多いです。
Feltの2020年ラインナップですと「BROAM(ブローム)」シリーズがそれに当たります。BREEDと比べると、BROAMのほうがチェーンステーを長めに取っており、荷物を積んで走る際の安定性に配慮しているのが伺えます。
情報源: Felt BROAM | 30(ブローム | 30) | フェルト公式日本語Web | Felt公式日本語Web
ロングライド向けロードバイク
2000年代半ば、ロードバイクにレースよりもホビーとしてのロングライドに主眼を置いた「グランフォンドモデル」が流行しました。そこから「レーサーではないロードバイク」は市民権を得て、やがてタイヤは太くなり、今ではディスクブレーキを得ました。
ディスクブレーキが搭載されると、対応するタイヤ幅はさらに広がります。28Cは当たり前で、30C以上が標準、35Cくらいまで使えますよ——というロングライド向けロードバイクは、今や珍しくありません。
Feltで言えば、この手のジャンルとしてはロングセラーになりつつある「VR」シリーズがそれにあたります。同じフェルトのFRシリーズよりも状態が起きたポジションで、30mm幅のタイヤでも左右6mmのクリアランスを確保。『実際に装着可能なタイヤ幅の上限は35mm』とされおり、これならグラベル走行も可能です。
ただ、基本はあくまでも「ロードバイク」です。
情報源: Felt VR | Advanced | Ultegra(VR | アドバンスド | アルテグラ) | フェルト公式日本語Web | Felt公式日本語Web
シクロクロスバイク
さて、オンロードもオフロードもこなせるドロップハンドルの自転車といえば、以前から「シクロクロスバイク」がありますね。シクロクロスバイクは文字どおり、未舗装路や障害物のあるコースを、時には自転車を担いだりしながら進む「シクロクロス競技」のための自転車です。
シクロクロスバイクには、競技に特化したものと、ある程度多用途をこなせるものとに大別できます。Felt 2020年モデルの「FX」シリーズは、競技寄りのシクロクロスバイクです。
ただ、どんなものでも「シクロクロス」と謳っているものは、BB(ボトムブラケット)の位置が高く、ホイールベースは短め、ハンドリングはクイックであることが多いです。
また、ユーザーの間には「レースをやるなら特化したものがよい」という声と「多用途なほうがよい」という声が常にあって、最近では「レース向きの性格だけどフェンダーが取り付けられる」といったようなものもあります。一方で本当にシクロクロス競技に特化したものは、ボトルケージ台座がひとつしか備わっていなかったりします(レース時間が短いから)。
情報源: Felt FX | Advanced+ | GRX 800(FX | アドバンスド+ | GRX800) | フェルト公式日本語Web | Felt公式日本語Web
シクロクロス風マルチパーパスバイク
グラベルロードなんていうカテゴリーが出てくる前から、シクロクロスバイクの多用途性に着目する人は少なくありませんでした。太めのタイヤを履くことができるので、通勤やツーリングに使いたいというニーズが出てくるのは、当然のことです。
そこで、シクロクロスバイクをベースにしつつも、レース色を抜いて実用性に振ったものが、各メーカー・ブランドから発売されました。決まった呼び方はなくて、ここでは「シクロクロス風マルチパーパスバイク」としましたが「シクロクロス風ツーリング」と呼ばれたり、単にコミューターとして扱われたりします。
ここでFelt以外のバイクが出てくるわけですが、近年代表的な存在と言えるのが、FUJI(フジ)の「FEATHER CX+」でしょう。
名前にCXという文字が入っていますが、2020年モデルでは「マルチパーパスグラベルロード」と表現されています。
情報源: FEATHER CX+|FUJI BIKE フジ自転車
ツーリングバイク
太めのタイヤで未舗装路もこなせるドロップハンドルの自転車といえば、ツーリング車も忘れてはなりません。ここで紹介するのは、古典的なものではなく、現代的なルックスとスペックをもつツーリング車です。まあ、通常はこれをグラベルロードやアドベンチャーロードには含めないとは思いますが。
TREK(トレック)の「520」は、前後のキャリアを標準装備。フレームの設計は安定感を重視したもので、ギア比も坂道をこなせるようにワイドなものとしています。
キャリアが備わることでツーリング車然としていますが、キャリアが無ければアドベンチャーロードバイクとの違いはあいまいなものになりますね。
便利なことば「オールロード」
カテゴリーとして明確なわけではありませんが「オールロード」という呼び方もあります。いわゆるグラベルロードバイクをオールロードと呼ぶ人もいますし、太めのタイヤでダートもそこそここなせちゃうよ……というようなロードバイク(本稿で言えばFelt VRシリーズ)なんかをオールロードと呼ぶこともあります。
オールロード=路面を選ばないということなので、便利といえば便利です。アップライトなポジションで35Cくらいまで装着できるディスクブレーキのロードバイクを「オールロード系」なんて表現すれば、確かになんとなく雰囲気は伝わるような気がしますね。
もちろん、メーカー・ブランドによっては特定の製品をもって「これこそが“オールロード”だ」と主張することもあるでしょう。
強引にめとめると
さて、手短かなんだかそうじゃないんだかよくわからなくなってきましたが、もしもしグラベルロードやらアドベンチャーロードやらといったカテゴリーのバイクが欲しくなったときには、メーカーやブランドによる細かなジャンルの呼び名に囚われる必要はありません。
ショップで各バイクの実物を観察したり、ショップスタッフの説明を聞いたりしながら「自分のやりたいこと、自分が描いているイメージ」と合致するかどうかを重要視しましょう。
関連リンク: グラベル&アドベンチャーロード 2020年モデル情報 – CyclingEX
(Gen SUGAI)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。