今日、仕事で都心方面にでかけて、移動の合間にとある家電量販店に寄りました。その店舗には自転車売り場があります。電動アシスト自転車コーナーには、ヤマハ発動機が発売した電動アシスト・ロードバイク「YPJ-R」が陳列されていました。

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YPJ−Rのスペシャルサイトでは、本稿執筆段階ではまだ販売店リストが公開されていませんでしたので、この家電量販店自転車売り場で出会うというのは、予想外の出来事でした。

少なくとも日本においてはシティサイクルかその延長線上にあるものばかりだった電動アシスト自転車の世界に、いきなり登場したYPJ-R。当然ながら賛否両論があります。また、ヤマハ発動機が発表会で説明した「ターゲットユーザー」についても、さまざまな意見があります。

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CyclingEXとしては、下総フレンドリーパークで試乗したという限られた判断材料のもとではありますが、ひとまず「肯定」の立場です。というか、結構アリなんじゃないかと思っています。

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ただ、ターゲットユーザーや実際の「使われ方」を想像すると、やはり「ここはなんとかしたほうが……」と思うところも、いくつかあります。今回はそれを先に書き出しておきます。

●「これから始める人」にとってYPJ-Rは妥当か

YPJ-Rのターゲットユーザーは、上記リンクにもあるように「これから始める人」です。どちらかといえば若い層に乗ってほしいというのが、ヤマハ発動機の本音でしょう。しかし現実的なところでは、高年齢層からの引き合いも多いことでしょう。

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スポーツサイクルに対する先入観のない人のほうが、YPJ−Rのコンセプトや性能をすんなり受け入れてくれるだろう、楽しんでくれるだろう……という想像は、たしかにあります。

そして「これから始める人」が、YPJ-Rを前にしてロードバイクの崇高さや精神性、自己顕示欲を満たすツールとしての有能さ、ひいては人間の精神のありかたまで唾を飛ばして話したり、Facebookに口汚ないフレーズで書き散らしたりもしないでしょう。

ターゲットは、これから始める人。

うん、わかる。

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一方で、これから始める人が先入観がゼロなのは良いとして、YPJ−Rを本当に楽しめるのか?という疑問も湧いてきます。

というのも、YPJ-Rは「ロードバイク」なんです。

まったくスポーツサイクルの経験がない人がいきなりロードバイクに手を出して、本当に楽しめるのかどうか。しかもYPJ-Rは、何年もスポーツサイクルに乗ってきた人が思わず「おほっ!」と声が出て顔がほころぶような「強モード」を搭載しています。これが「これから始める人」にとって、安全なものなのかどうか。

実はYPJ-Rって、今まで何台かロードバイクを乗り継いできて、最新のカーボンもレーサーもエンデュランスも、そしてクロモリロードも持っていて、1周回ってきたところで「なんか面白いのないかな〜?」と思っているような人にこそ、向いているような気もします。あるていどわかっているからこそ楽しめる、という。

そういうギャップが埋められるかどうかが、YPJ-Rが成功するかしないか、定着するかしないかのカギではないでしょうか。

●つまり「どこで買うのか」「どう始めるのか」が問題だ

はじめてのスポーツサイクルとして「YPJ-R」を選んだ場合、ユーザーが習得しなければならないこと、慣れなければいけないことは、ふつうのロードバイクより多いことはあっても、少ないことはありません。

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説明なしに105のSTIが使えるでしょうか。

使えないですよね。

それまでシティサイクルしか乗ったことがない人が、何の説明もなしにブレーキやホイールのクイックを解除してホイールを外し、パンク修理ができるでしょうか。

ちょっと難しいと思うのです。

大事なのは「どこで買って」「どんなふうに電動アシスト・ロードバイクライフをスタートさせるか」です。

愛媛県では、県の事業として「アクティブシニアサイクリング体験会」というものを行っていて、シニア層のみなさんのスポーツサイクルデビューを手助けしています。サイクリングを生涯スポーツとして楽しんでもらい、健康な生活を送ってもらおうという趣旨です。しかし、転んでケガをしたら元も子もありませんから、これからはじめていただくためには十分な注意も必要です。

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そこで行われているのは、ひとりひとりの体格にあったレンタルバイクを用意するのはもちろん、またがり方/降り方から徹底してお教えするという作業。もちろん参加者のシニアのみなさんは、シティサイクルくらいは乗ったことがあるし、若い頃はMTBに乗っていたなんて方もいます。それでも、イチから練習してもらいます。

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そして、ギアの操作方法もしっかり教えます。単にシフターの操作方法だけではなく、まずはスタートして、ギアチェンジをせずにストップするという作業を繰り返し、発進/停止ができるようになってから、速度に応じたギアの使い方を練習します。

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1時間練習すると、みなさんかなりしっかり乗れるようになります。

この教え方も、教える役のスタッフが感覚でやっているのではなく、統一された教え方で行い、できない人がいたら個別でしっかりフォローしています。

関連記事: シニアがしまなみ海道で学んだ、走った、楽しんだ!愛媛県「アクティブシニアスポーツサイクル体験会」レポート(前) | CyclingEX

対象がシニアの方々なのでかなり念入りにやっている部分はありますが、それまで経験がゼロの人にスポーツサイクルを安全に始めてもらうためには、これくらいのことが必要なのです。

逆に、しっかり教えてもらい、練習もした上でサイクリングを楽しむことができれば、それはすばらしい体験になります。

話をYPJ−Rに戻すなら、この電動アシスト・ロードバイクのターゲットは「これから始める人」です。購入者が本当に「これから始める人」であり、クロスバイクやふつうのロードバイクにも乗ったことがないというのであれば、愛媛のアクティブシニアサイクリングで行われていることと同じくらいのことが「納車説明」として行われも、バチは当たらないはずです。

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ターゲットが「これから始める人」であれば、「始め方」までデザインされているべきです。怖い顔をしてスポーツサイクルがいかに難しいものかをことさら強調するような必要はないかと思いますが、気軽に興味を持ってもらい、体験してもらいつつ、それを手厚くサポートしてスポーツサイクルデビュー、電動アシスト・ロードバイクデビューを「アシスト」してあげる必要はあるでしょう。

私はYPJ-Rに試乗して以来ずっと「これ、しまなみ海道で乗りたい!」と思っています。

そして、しまなみ海道の玄関口である「サンライズ糸山」のレンタルバイクに、このYPJ-Rがあれば面白いとも思っています。しかしそれは、ただレンタルバイクの中にYPJ-Rがあれば良いだけではなく、始めてロードバイクに乗る人でも安全に楽しめるように、操作方法をしっかり説明し、ガイド付きで伯方島まで行って帰ってくる……というようなメニューまでできればという、条件が付きます。

もちろん今すぐそんなことができるだけのリソースは無いわけですが、課題が解決できれば「スポーツサイクルの始め方」という面でも、そして「サイクルツーリズム」という面でも、さまざまな可能性が見えてくるのではないでしょうか(これは電動アシスト・ロードバイクに限ったことではありませんね)。

さぁ、YPJ−Rを買うなら、どこのお店に行きましょうか!?

高性能スポーツ自転車の新しいカタチ「YPJ-R」

情報源: YPJ-R スペシャルサイト | ヤマハ発動機株式会社

(Gen SUGAI)