いわゆる「ママチャリ」と呼ばれるシティサイクルではなく、かっこよくてスピードが出る自転車でサイクリングを楽しみたい、自転車通勤をしたい——そう思ってネット上で自転車について調べたり、お店に行って品物を見たり店員さんの話を聞いたりする中で、多くの人が「どうやらクロスバイクというものが良いらしい」という答えに行き着くことでしょう。

2021年版はこちら!: 初心者におすすめのクロスバイク2021年版:通勤や通学に最適な1台を選ぼう! – CyclingEX

クロスバイクとは、ロードバイクとマウンテンバイク(MTB)の中間的な自転車で、軽くて速くて、しかも乗りやすいという、これからスポーツ自転車を始める初心者・ビギナーの人には最適な存在です。

しかし、今までスポーツ自転車に興味が無かった人にとってみれば、いきなり「ロードバイクとマウンテンバイク(MTB)の中間」と言われもわからないでしょう。また、実際に自転車メーカーのWebサイトや雑誌を見ていると「クロスバイク」にも実にいろいろあって、何がどう違うのか、何を選んだら良いのかわからなくなってしまいます。

自転車なんて2万円で買えると思っていた人が「クロスバイクを買う」となると、一大決心が必要なはずで、この「わからなさ」ゆえに不安な気持ちになってしまうこともあるでしょう。そこでCyclingEXがここ数年、毎年のように記事にしているのが「初心者のためのクロスバイクの見分け方・選び方」です。

筆者自身、よく「おすすめのクロスバイクは?」という質問をされます。また、検索キーワードでは「クロスバイク 2016 おすすめ」や「クロスバイク 初心者 おすすめ」といったものが多いです。しかし何がおすすめなのかは、その人によって変わってきます。大事なのは、自分に合ったクロスバイクと出会うことです。

というわけで前置きが長くなりましたが、これからクロスバイクを購入したいと考えている方のために、クロスバイクの「性格」の見分け方、選び方を紹介したいと思います。

■そもそもクロスバイクとは何か

クロスバイクとはどんな自転車かを説明する前に、一般的な自転車の種類を紹介します。

<シティサイクル>

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シティサイクルやママチャリと呼ばれるジャンルの自転車は、日常生活の中で使われる自転車です。とくに日本においては、自転車が歩道を走行するのが当たり前になってしまっていることもあり、低速度でのんびり走るのが得意分野。買い物等の使い勝手は最高ですが、スピードを出すのは苦手で、軽快感とは程遠い存在でもあります。

<MTB(マウンテンバイク)>

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その呼び名の通り野山を走り回るための自転車です。MTBにもいろいろなものがあるのですが、基本的には太いブロックタイヤを履いています。比較的安価(しかも安すぎないもの)は、のんびり走るなら街乗りにも向いています。

MTBにも興味ある!という人は、下記の記事もチェック!

関連記事: 楽しみ方も自転車もいろいろ!マウンテンバイクの種類 – CyclingEX

<ロードバイク>

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スポーツサイクルの花形とえば、やっぱりロードバイク。舗装路を速く走るための自転車です。とても細いタイヤやドロップハンドルが特徴で、ホイールは「700C」というサイズがほとんど。

やっぱりロードバイクが欲しいかも……と思ったら、下記の記事もチェック!

関連記事: あなたにおすすめのタイプがきっと見つかる!2016年モデル版・初心者のためのロードバイクの見分け方・選び方 – CyclingEX

<ミニベロ(小径車)>

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20インチ前後の小さな車輪を持った自転車です。シティサイクル(ママチャリ)の範疇だと「ミニサイクル」、スポーツ車の範疇だと「ミニベロ」です。小さくてかわいい存在で、思いの外よく走るものが多いですが、実は乗車姿勢的な視点でいうとそれほど小さくなかったり(ハンドルが遠い)することもあります。

関連記事: ポタリング用に欲しいミニベロ2016年モデル7選 – CyclingEX

<フォールディングバイク(折りたたみ自転車)>

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クルマのトランクに積んだり、電車に載せたりするのに便利なフォールディングバイク(折りたたみ自転車)。折りたたんだ際のサイズを小さくするために、20インチ等の小さな車輪を採用しているものがほとんどです。

<クロスバイク>

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MTBとロードバイクのメリットを併せ持った自転車です。MTBのようなフレームと、ロードバイクと同じ「700C」サイズのホイール、そしてMTBとロードバイクの中間の太さのタイヤを装備するのが標準形ではありますが、ユーザー層の広がりや楽しみ方の多様化に応じて、クロスバイクにもさまざまな種類が出てきています(それを解説するのが、この記事の本題です)。

そのほかにもいろいろな自転車がありますが(ツーリング車とか、実用車とか)、主だったところはこんな感じです。

■クロスバイクの種類

自転車の種類についてひととおり紹介したところで、いよいよクロスバイクについて細かく見ていきたいと思います。

クロスバイクをさらにその構造によって分類すると、下記の3つになります。

・前サス無しのクロスバイク
・スピード系クロスバイク
・前サス付きのクロスバイク

そういう呼び名が決まっているというわけではありませんが、この記事では便宜上、このように呼ぶことにしますね。

では、この3つについて、それぞれ見ていきましょう。

●安定感のある定番タイプ「前サス無しのクロスバイク」

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読んで字のごとく、前サス(フロントサスペンション)が付いていないクロスバイク。かつて、クロスバイクと言えばフロントサスペンション付きが当たり前の時代がありました。しかし、フロントサスペンションは乗り心地は良いのですが、どうしても重たくなってしまいます。そこで、サスペンションではない「リジッドフォーク」として、軽快感を重視するものが増えてきました。

今ではむしろ、このスタイルが「いかにも」という感じのクロスバイクです。

代表格として下記の製品を挙げておきます(車名または画像をクリックすると紹介記事にジャンプします)。

TREK 7.4FX

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RITEWAY SHEPHERD CITY

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CANNONDALE QUICK 4

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SPECIALIZED SIRRUS

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BRIDGESTONE CYLVA F24(紹介記事は外部サイト『BRI-CHAN』です)

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●ロードバイクに迫る走行性能の「スピード系クロスバイク」

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クロスバイクはMTBとロードバイクの良いとこどりだと言われますが、フレームがMTBをベースとしたものであることが多く、ロードバイクに比べればどうしても軽快感に劣るのが常識でした。しかしある時期から「クロスバイクといえどもロードバイクに近い軽快感を!」ということで、フレームを軽量化、ホイールベースを短縮して旋回性能を向上、そして700×28Cなど細めのタイヤを装備したものが出てきました。

入門グレードのロードバイクに匹敵、ときには凌駕する性能を持ちながら、ロードバイクよりもはるかにとっつきやすく、ストリートで使いやすい、今いちばんおすすめのジャンルです。

代表格として下記の製品を挙げておきます(車名または画像をクリックすると紹介記事にジャンプします)。

GIANT ESCAPE RX 3

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GIANT ESCAPE R 3

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GT GRADE FB COMP

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●未舗装路も走るアナタに「前サス付きのクロスバイク」

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比較的安価だけどタフなフレーム、700Cというロードバイクと同じ径のホイール、32C〜38Cとタイヤは太め、中級グレード以上はサスペンションのついたフォーク……といった構成です。「比較的安価」と書きましたが、このスタイルで10万円を超えるような「高級車」もあります。

都会の人間、しかもクロスバイクからロードバイクへステップアップした人は「フロントサスペンションなんかいらない」と言いますが、実際のところ好みは人それぞれです。

代表格として下記の製品を挙げておきます(車名または画像をクリックすると紹介記事にジャンプします)。

TREK 8.3 DS

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GT TRANSEO 4.0

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■わかりやすい違いは「タイヤの太さ」

メーカーのWebサイトやカタログを眺めて、クロスバイクのキャラクターをどのように見分けるにはどうしたらよいでしょうか。フロントサスペンションの有無は、写真で見分けがつきます。それ以外でわかりやすいのは、やはりタイヤの太さではないでしょうか。

クロスバイクで一般的な「700C」という径のタイヤの場合、タイヤのサイズ表記は「700×28C」や「700×32C」となっています。この「28」や「32」というのが、タイヤの幅で、数字が大きいほど太いタイヤということになります。

シティサイクルの感覚からすると、32C〜38Cあたりのタイヤであれば違和感がないはずです。28Cや25Cなどになってくると「こんなに細くてパンクしたり溝にはまったりしないかな?」と不安を抱く人もいます。

そして、ロードバイク的な性能を目指したスピード系のクロスバイクなら、700×28Cのタイヤを標準装備するのが定番です。一方、安定感を重視するほど、タイヤは32C→35C→38Cと、太くなります。

■「ジオメトリー」もチェックしてみる

ちょっと専門的な話になりますが、ちゃんとしたスポーツサイクルメーカーのカタログには、ジオメトリー(ディメンション)図が掲載されています。「フレームのここからここまでが○mm」といったことを説明している図です。

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上図は有名ブランド「キャノンデール」がQUICK 4の製品情報と併せて掲載している図および表です(リンク)。

その人にとってどのサイズが最適かということは、体格や柔軟性、用途等によって変わってしまいますので、自転車店でご相談いただくとして、とりあえず「チェーンステー長(もしくはリアセンター)」「ホイールベース」をチェックしてみるとよいでしょう。

乱暴に言えば、リアセンターとホイールベースが長いほうが、直進安定性に優れた自転車になります。逆に短ければ、軽快感を狙った設計です。

もうひとつ、「ヘッドチューブ」にも注目してください。ヘッドチューブが長いほど、ハンドルが高めにセットしやすくなります。ハンドルが高いほうが上体が起きた乗車姿勢となり、ビギナーの人はとっつきやすくなるでしょう。

※ちなみに……

タイヤが700×28C以下で、チェーンステー長もリアセンターも他のクロスバイクと比べてとても短い……そんな自転車は、クロスバイクではなく「フラットバーロードバイク」かもしれません。そのメーカー/ブランドのカタログを眺めて、同じフレームのカタチでドロップハンドルのモノがあれば、その可能性が高くなります。

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フラットバーロードバイクは、ブレーキもロードバイク用のものが付いています。クロスバイクには、だいたい「Vブレーキ」と呼ばれるものか、ディスクブレーキが付いています(今後、ディスクブレーキのフラットバーロードバイクも出てくでしょう。そうなると、見分け方はタイヤとジオメトリーくらいになります)。

ちなみに上の写真はCOLNAGO(コルナゴ)の「REZZO」というフラットバーロードバイクです。

■ちょっと気にしておきたい「リアエンド幅」

いきなり出てきた「リアエンド幅」って、なんでしょう。メーカーによっては「OLD」なんて呼んだりもします。これは大雑把に言えば、フレームの、リアのホイールがはまっている部分の「幅」です。そんなところの幅、自転車なんてどれも同じなんじゃないの?と思われるかもしれませんが、実は違います。

ロードバイクならリアのエンド幅は130mm、MTBなら135mmや142mmなどが多数派です。ロードバイクでもディスクブレーキのものは、135mmが採用されるようになってきました。ではクロスバイクはどうかというと、130mmものと135mmのものが主流です。

先ほどちょっと出てきた「700C」という径の車輪で、リアのエンド幅が130mmのクロスバイクですと、ロードバイク用として販売されているホイールに交換することが可能です。一方、径が700Cでエンド幅135mmのホイールは完成品としてはあまり販売されておらず、ホイールを交換するというカスタムはやりにくくなります。エンド幅はカタログに書いていないことが多いので、気になる場合はショップで聞いてみてください。

■クロスバイクの予算はどれくらい見ておけば良いか

はじめてのスポーツ自転車としてクロスバイクを購入する場合、予算はどれくらい見ておけば良いでしょうか。「初心者だから予算は少なめにしたい」と考える気持ちはわかりますが、乗り物である以上、価格と品質、楽しさはある程度比例してしまいます。

できれば最低でも5万円は見ておきたいところです。7万円前後あれば、はじめてのクロスバイクとしては十分でしょう。もちろん、予算が許す限り、上級のグレードを購入したほうが、満足度が高いのは言うまでもありません。一方で、10万円を超えるクラスになってくると、今度は街中で駐輪するのに躊躇してしまいます。

というわけで、クロスバイク本体の予算は5〜10万円といったところでしょうか。

また、ポンプ(空気入れ)やパンク修理キット、最低限の工具、ライト、ヘルメット等々で、3〜5万円ほど見ておいたほうが良いでしょう。

■まとめ

以上、クロスバイクについていろいろと解説してみました。

乱暴にまとめますと、シティサイクルからの乗り換え、そしてシティサイクルの延長線上でゆったり乗りたいのならば、ホイールベースが長めでタイヤの太いモデルがおすすめです。スポーティで軽快感のあるクロスバイクが欲しいなら、タイヤが細めのものがおすすめ。そして「いつかはロードバイクがほしい……」という気持ちがあったり、「ゆくゆくはより速く、軽くカスタムしてみたい……」と考えている人は、リアのエンド幅が130mmのものを選ぶと良いのではないかと思います。

もちろん、Web上で製品情報や数字を見ているだけでは、あなたにとって最適なクロスバイクを選ぶことはできません。「自転車ってどれも似たように見えて、結構違うんだな」ということをアタマに入れつつ、やはり自転車専門店で相談するのがいちばんです。たくさんの人と自転車を見てきたお店なら、あなたにとって最適なフィッティングを施してくれるでしょう。

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(Gen SUGAI)



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