しまなみ海道における四国側の玄関口となる、愛媛県今治市。造船で栄える街であるとともに、しまなみ海道ができるよりもずっと以前から、四国と瀬戸内の島々、そして本州とを結ぶ航路のターミナルとして発展してきました。航路からしまなみ海道へと、そのアクセスルートは大きく変化しましたが、交通の要所であり続けています。
そんな今治の街にある「ジャイアントストア今治」は、その名の通り世界最大の自転車メーカー・ジャイアントのブランドストアであり、2012年4月にオープンしました。
●改札を出て30秒のスポーツサイクル専門店
まずすごいのが、その立地。
JR今治駅の東口を出て、左へとファサード沿いに進むと……すぐそこ。要するに駅舎のテナントとしてスポーツサイクルショップが入居しているんです。この立地には大きな理由がありました。店長の武田恭輔さんは、こう話します。
「しまなみ海道というすばらしい環境があるので、サイクリストのための環境づくり、拠点づくりを行おうということでオープンしたのがジャイアントストア今治です。しまなみ海道を訪れたサイクリストがトラブルに対処できたり、用品を購入できたりということもありますし、ジャイアントストアではじめてレンタサイクルを用意したのも大きな特徴です」
県外から鉄道で訪れたサイクリストが、例えば輪行状態から組み立てた時に何かトラブルを発見した!とか、忘れ物をした!といったときも、駅構内に大きなスポーツサイクル専門店があれば、修理や購入等の対処ができます。また、レンタサイクルがあるので、身軽な装備で今治の街を訪れて、本格的なスポーツバイクをレンタルしてサイクリングを楽しむこともできます。
お店の雰囲気はジャイアントストア共通の、とても明るくて清潔感があるもの。販売される自転車やグッズ類は見やすく展示され、レンタサイクルはしっかり整備された状態で整然と並んでいます。
また、ラウンジスペースが設けられて、出発前に情報収集ができたり、ロッカーや男女別のシャワールームが用意されるなど、サイクリストをサポートする環境がとても充実しています。
「かつて、サイクリングといえばごく一部のマニアの趣味だったと思うんです。それを、ゴルフやテニス、スキーなどと同じレベルまで持っていきたい。そのためには、いい自転車を気軽に借りることができる環境が必要だと思います」
趣味として楽しまれているスポーツの多くは、はじめての人のために道具のレンタルが用意されています。そして、その使い方を教えてくれる人もいます。自転車もそれと同じような環境が必要だと、ジャイアントやジャイアントストアは考えているわけです。そして、その考えを実行するために今治は絶好の土地でした。
●本格的なスポーツサイクルをレンタルしてしまなみ海道を楽しむ
では、実際にどんな人たちが、ジャイアントストア今治でレンタサイクルを利用しているのでしょうか。
「2012年のオープン当初は、もの珍しさもあったのでしょうか、市内・県内の方が多かったように思います。その後は、年々県外のサイクリストが増えていますね。ここ最近ですと、レンタサイクルを利用するお客様の8割は県外からです。当初は“スポーツサイクルは持っているが、持ってくるのが面倒”というニーズが多かったのですが、最近は“スポーツサイクルはまったくはじめてだけど、しまなみ海道でチャレンジしたい”という方が増えているんです」
そしてジャイアントストアのレンタサイクルでも人気が高いメニューが、乗り捨てです。2014年3月、尾道にもジャイアントストアがオープンしました。これにより、今治で借りて尾道で返す、もしくは尾道で借りて今治で返すという、レンタサイクルの乗り捨てが可能になりました。
「乗り捨てサービスはとても人気が高く、対応できる数に限りがあるので、予約はすぐに埋まってしまいます」と武田さんは話します。
県外から多くのサイクリストが訪れ、しまなみ海道を楽しむ。そして、その拠点として機能するジャイアントストア今治。県外から注目されることで、今度はまた、県内・市内の人々も、しまなみ海道やスポーツサイクルの魅力に気づき始めているようです。
●地元の人たちも「自分もしまなみ海道を走りたい」とスポーツサイクルを購入
「しまなみ海道のサイクリングが新聞やテレビなどでも取り上げられ、実際に県外からたくさんの方がやってくることによって、地元の方たちがその魅力に気づき始めています。“そんなにいいんだったら、自分もやってみよう”ということで、スポーツサイクルを購入する方が増えているんです。今治は人口15万人の街ですが、思っていた以上に、スポーツサイクルを始める方が増えています」
ジャイアントストアは、これからスポーツサイクルをはじめるビギナーを大事にするお店づくりをしています。それは今治でも変わりありません。ですから冒頭にも書いたように、お店はとても明るい雰囲気ですし、商品はとても見やすく配置されています。ただ、ジャイアントストア今治で自転車を購入してスポーツサイクルデビューをする方たちには、他の店舗とはちょっと異なる事情があるようです。
「とりあえず最初の1台が……であるとか、通勤に使おうかと……といった方ももちろんいらっしゃるのですが、それ以上に“自分もしまなみ海道を走りたい”という、目的がはっきりした方が多いんです。ですから最初の1台として選ばれるのも、クロスバイクであればESCAPE R 3よりもよりスポーティーなESCAPE RXシリーズになります。そして、最初からDEFYシリーズ等のロードバイクを選ばれる方も多いです」
そうやってESCAPE RXシリーズやDEFYシリーズを購入した方は、実際にはどんなふうにサイクリングを楽しんでいるのでしょうか。
「ここ数年の間に、地元企業などでサイクリング同好会、サイクリングチームが増えているんです。そこに参加して、しまなみ海道を走ったり、ロングライドイベントに参加したりされる方が多いようです。もちろん当店でもショップイベントは行っていますし、各ジャイアントストアでもサイクリングクラブを立ち上げているのですが、いわゆる“ショップ縛り”ではなく、ビギナーと上級者の間をつなぐようなものにできたらと思っています」
また、今治はもとより愛媛県内には、しまなみ海道だけではなく豊富な山があります。MTB好きの武田店長は、そんな愛媛でMTBを思う存分楽しめたら……と考えています。
「他のショップさんといっしょに、愛媛マウンテンバイククラブというものを立ち上げて、MTBを楽しめる環境づくりのために、奉仕活動やコース作りのお手伝いなどをしています。今治では、マウンテンバイクを使ったネイチャーサイクリングのインストラクターを育成する事業も始まります。オンロードのサイクリングだけではなく、MTBも愛媛で楽しめるようにしたいですね」
●今治のストア限定グッズも魅力
最後に、ジャイアントストア今治でしか手に入らないアイテムをいくつか紹介しましょう。
まずは、しまなみ海道をモチーフにしたサイクルジャージ。島々にかかる橋のイラストや「しまなみ海道」の文字をあしらい、外国人観光客のおみやげにもぴったりです。
オリジナル手ぬぐいも定番アイテムです。
そして、しまなみ海道のイラストが入ったドリンクボトル。ボトルは軽いので、こちらもおみやげとして買いやすいでしょう。
そして今治といえばタオル。ジャイアントストア今治では、今治タオルを使ったサコッシュ、タオルハンカチ、ヘルメットインナーキャップなどを取り揃えています。
というわけで、ジャイアントストア今治を紹介しました。
国内はもとより、海外でもメディアに紹介されるなどして「サイクリングの聖地」となった、しまなみ海道。ジャイアントの自転車に乗っている人も、そうでない人も、しまなみ海道を訪れる際には「ジャイアントストア今治」に立ち寄ってみてはどうでしょう。
個人的には、神奈川から今治や尾道に自転車を持ち込んだり運送を手配したりというのは手間がかかるので、ジャイアントストア今治のレンタサイクルサービスを使ってしまなみ海道をサイクリングするのも良さそうだな……と思いました。
(Gen SUGAI)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。