過去2度に渡って記事にした、新虎通り・環二通りの自転車道のこと。
実際に画像や動画を見て頂くとわかりますが、まだ明らかに「仮」の姿です。歩道の一部を区画してありながら道交法上の「自転車道」であることは決定事項でしょうが、まだ歩道の舗装はきちんとなされていませんし、歩道と自転車道と車道を隔てる構造物は、工事現場のバリケードそのものといった状態です。
そのような状態がいつまで続くかわかりませんが、そんな今だからこそ(ひとまず、筆者自身が)望むことを、整理して書いてみたいと思います。
まず、自転車道が一方通行であるべきか双方向であるべきか。これだけでも意見が割れる大問題ですよね。ただ、個人的には一方通行であろうが双方向であろうが、それが本当に自転車利用者や歩行者にとって安全で快適なものであれば構わないはずだ……というスタンスでいます。
同時に「交差点部の処理がきちんと行われていない自転車道は、無いよりずっといいけど、ちょっとアレ」であり、その自転車道が双方向であった場合「アレ具合が加速してしまう」とも思っています。
参考記事:国道16号相模原市内の自転車道を走ってみた【バイクコンシャス】 | CyclingEX.
例えば。
自転車道を自転車で通行中、青信号を直進したいだけなのに、前方に信号待ちの歩行者が滞留している。今、この現状で、自転車で通行する側は歩行者に注意し減速して通行するのは当然です。そんなことはわかっています。しかしそれが歩行者や自転車にとって安全で快適な道路環境と言えるのでしょうか。
(この画像では前方の信号が赤になった直後ですが)このような状態ですから、歩行者の動線と自転車の動線が交錯します。
さらに言えば、左折車にいたっては自転車横断帯を塞いで歩行者が通り過ぎるのを待っている状態です。
既存の道路の改良がすぐに進まないのはしかたがありませんが、この道路は新設されたのです。自転車道を一方通行で作るにしろ双方向通行で作るにしろ、交差点部で歩行者や自転車がそれぞれどこで信号待ちをすれば安全なのか、そして交差点においてどうやって自転車を通過させれば安全なのか、考える時間はあったはずです。
そこで個人的な考え。交差点処理をしっかり考えてやり直してください。交差点処理から逆算して自転車道を考えるくらいでも良いと思います。そして考えた結果「無理!」なのだとしたら、現状の自転車道を廃止して、一方通行の自転車道にするとか、車道の左側を自転車専用通行帯にしたほうがよっぽどマシでしょう。
少なくとも現状の「交差点のたびに自転車道が歩道に接続されてしまう」という形態は、なんとしても改めて頂きたいです。
そもそも、自転車専用通行帯を整備する方向で考え直せば、汐留側(環二通り)の、
こういうのも解消できると思うのです。
さて、ここで久しぶりに「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を持ち出してみます。「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を少しずつ読む」シリーズの中で、交差点処理について書いた記事があります。
「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を少しずつ読む(11)交差点部の設計、左折レーンがある道路ではどうなる!? | CyclingEX.
この記事や、ガイドラインの本文をお読みになって気づいた方はいらしたでしょうか。このガイドラインの「II 自転車通行空間の設計」>「2. 交差点部の設計」には、重大な欠陥があるのです。
ここ。
そう、このガイドラインは、双方向通行の自転車道における交差点の設計について、何一つ示すことができなかったのです。
今からでも遅くありません。何か指針を示すべきです。それはひとまず、国交省の仕事ということになるでしょう。
(Gen SUGAI)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。
CyclingEXさんのご指摘のとおりで、この新虎通りは交差点部の自転車の通し方を検討した形跡が無いというところが一番の問題だと思います。
新虎通りは歩行者がかなり多いので、歩道上に自転車を通す場合、交差点周辺での自転車と歩行者の分離が難しくなりそうですね。
そこで車道端の自転車レーンという選択肢も出てくるわけですが、その場合、車道の制限速度が40km/h(https://www.youtube.com/watch?v=t6BjhXtJTpEの2分1秒から)というのが問題です。もうちょっと低い方が良い。
そもそも、せっかく通過交通を地下に通したのに、なぜ地上空間も車優先になっているのか。こんな所にも新虎通りの設計思想の古さが窺えます。
もしかしたら、途中で強引に設計変更したのかなとも思っています。当初は、歩道上に線を引くか舗装の色を変える程度しか考えていなかったのではないかと。