「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を少しずつ読む」シリーズ、またまた、かなり時間が空いてしまいましたが第10回目です。ガイドラインは下記からどうぞ。

安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン

前回は、バス停部分の処理について紹介しました。コチラです。

さて10回目ですが、歩道橋などの処理についてはちょっと割愛させていただきまして(すみません)、「II 自転車通行空間の設計」から「1.3 特殊部における自転車通行空間の設計の配慮事項」>「1.3.3 パーキング・メーター等設置区間部の設計」を紹介したいと思います。

 

Vehicle parked in bicycle lane
Vehicle parked in bicycle lane by Richard Drdul, on Flickr

 

その前に、荷捌きや人の乗降のことを書かせてください。実は、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」に、クルマによる荷捌き場の設置……的なことは示されていません。正確に言うと「IV 自転車利用の総合的な取組」>「1.自転車通行空間の効果的利用への取組」>「1.1 駐停車・荷捌き車両対策」という項目があり、その中で、

路外駐車場が付近になく、かつ駐停車需要の多い路線において、自転車通行空間の整 備により駐停車ができなくなる場合は、沿道の理解、協力のもと、当該路線や並行または交差する別路線の路上または路外に、沿道利用の車両や荷捌き車両、タクシー等の一 時的な駐停車に対応した駐停車空間を確保することに努めるものとする。

……と記述されています。

そして、タクシーの客待ちスペースを、自転車の通行環境を整備した路線(道路)とは別の路線に移したり、同じく整備路線の一本裏道に荷捌き場を設けたりと、まぁ、無意味とは言いませんが、根本解決にはほど遠い内容と事例が示されているんです。

でも現実に、いつでもどこでも……とまでは言わなくても、本来必要とされるべきスペース、もしくはその近くに、荷捌きスペースやタクシーの待機場所、人の乗り降りができるスペースがあるのが望ましいわけです。

そして、ガイドラインの「II 自転車通行空間の設計」の中において、唯一荷捌き等に応用できそうなことが書かれているのが、この「1.3.3 パーキング・メーター等設置区間部の設計」になるわけです。

さて、パーキング・メーター等設置区間部の設計についての基本的な考え方です。

パーキング・メーター等について、利用率が低い場合は、撤去するものとする。周辺に路外駐車場の整備が進んだ場合等は、自転車通行空間を確保するため、撤去の必要性を検討するものとする。

実は、パーキングメーターは撤去する前提で書かれています。が、路外駐車場が整備できていればとっくに問題は起きていないわけで、以下には整備形態についての説明がちゃんとなされています。

自転車道の場合。あ、自転車道とか自転車専用通行帯とかの違いは<このへん>で。

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・パーキング・メーター等が必要な区間の自転車道は、歩道側に設置するものとする。
・パーキング・メーターを利用する自動車利用者が自転車道を横断することがあるため、区画線「歩行者横断指導線(104)」の設置や看板または路面表示等により自転車に対して人の横断があることを注意喚起することが望ましい。さらに、横断防止柵により横断する位置を集約することも考えられる。

自転車道が整備されるという場合、自転車道は歩道側とし、パーキングメーターと歩道とを行き来する人が通る場所も明示しましょう、ということですね。

続いて、自転車専用通行帯の場合。

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・パーキング・メーター等が必要な区間の自転車専用通行帯は、自転車と自動車の双方の安全性を向上させるため、駐車スペースの車道側に設置するものとする。
・駐車スペースと自転車専用通行帯との間は、駐車車両のドアの開閉時の接触を避けるため、余裕幅を確保することが望ましい。また、必要に応じ、パーキング・メーターの手前に看板や路面表示を設置し、駐車車両のドアの開閉に対する注意喚起を行うことが考えられる。

パーキングメーターにクルマが出入りする場合、自転車専用通行帯をまたぐことになりますが、その一方で、自転車の直進性は確保される、つまり自転車が急に右に進路を変えて、ドライバーがびっくり!みたいなことは、起きなくなります。どこでバランスを取るかの問題です。

最後に、車道混在の場合。つまり、自転車道も自転車専用通行帯も設置できず、「自転車が車道の左側を走りますよ」ということを示すピクトグラムが路面に描かれる程度……な場合。

・パーキング・メーター設置区間では、様々な形態が考えられるため、個別に検討するものとする。

まぁ、こう書くより他に無かったのでしょうね。

さて、もう一度荷捌きや人の乗降について書かせていただくと、幅員に余裕がある道路であれば、パーキングメーターについてのガイドラインを応用する形で荷捌きスペースを要所要所に設けることは可能になると思います。

しかし、自転車専用通行帯が設けられていても荷捌きスペースを設けるほどの余裕は無い、というケースはあります。「混在環境」の場合も当然、そんなスペースは無いことが考えられます。よく「駐停車のためのスペースを歩道側に設けるべき」という意見は聞きますが、それができてりゃ苦労しない、という道も現実には多いでしょう。しかし、ガイドラインではそこまでは示せなかった……ということになります。

ひとつ、私見です。

「自転車は車道の左を走る」という原則に立ち返るしかないのでは。

自転車が車道の左を走る。停車車両が前方左にいる。自転車は後方を確認し、合図を出し、右側から停車車両を追い抜き、左に戻る。自転車がちゃんと後方を確認し合図も出して進路変更をしているとき、後方から来ているクルマはそれを妨害しない。

これがいちばんわかりやすく、現行法から何ら逸脱せず、お金もかからないかと思います。もちろん、自転車側に「後方確認」や「合図」をどう意識付けるかという課題はありますが、それは本来、自転車がどこを走ろうが、どんな通行環境が整備されようが必要なことであり、今までないがしろにされていたのがおかしいだけですから。

(Gen SUGAI)

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