ブリヂストンサイクルが同社の60周年記念モデルのひとつとして、2010年モデルから展開しているordina(オルディナ)。その2011年モデルに、内装8段変速とベルトドライブを採用した「S8cb」というモデルがあります。心線にカーボンを採用した新開発の「カーボンベルト」が特徴のひとつ。幸いにもお借りすることができたので、年末年始のポタリングに使用してみました。
ぱっと見はふつうのクロスバイクですが、変速は内装式のシマノ・ネクサス インター8を採用しています。
リアディレーラーがなくスプロケットも1枚しかないので、とてもすっきりしています。しかし一方で、リアホイールはクイックではなくナット止めですし、チェーン引きもあります。クイック式のように簡単にホイールが脱着できないのは、この内装式の弱点のひとつ。
ベルトドライブの自転車には、ベルトのテンションを保つための機構が付いています。ブリヂストンサイクルの場合、軽快車の「アルベルト」であればフロントのギアが大きなギアの中に小さなギアが入っていて、外側の大きなギアがフローティングしている「フローティングベルトドライブ」が使われていますし(参考記事)、それ以外ではフロントのチェーンリング付近にテンショナーが装着されています。他社ですと、リアにテンショナーが付いていたりします。急激なトルクでベルトがたわむと歯飛びしてしまうので、それを抑えるにはテンショナーが必須とされていたのです。
しかしordina S8cbでは、カーボン心線を用いた高張力のベルトを新たに採用したことで、テンショナーを不要としています。
さて、青山でordina S8cbを受け取り、とりあえず新宿まで走ります。漕ぎ出したときの第一印象は「思ったより軽いかも」。インター8=重たいという先入観があったわけですが、カタログスペックでは11.6kgですし、実際に乗ってしまえばこの手のクロスバイクとしては十分な軽快感があります。
そして、ペダルの回転を上げてスピードを乗せていきます。ダンシングなんかもしてみます。ベルトドライブだから多少はたわむんじゃないかと思っていたのですが、実際には全然そんな感じがしませんでした。ダイレクトに、静かに駆動していきます。確かにこれならテンショナーはいらないでしょう。
変速時も極めて静かです。外装変速機はギアが変わるときにガチャガチャと音がします。この音はスポーツサイクルに乗っていると当たり前で、ふだんは何とも思わないのですが、いざインター8の自転車に乗ると、なんて静かなんだろうと感じます。一気に変速してもガチャガチャ言わないのは気分が良いものです。そして止まっているときに変速できるのも、内装変速のメリットです。
新宿駅からは、以前記事にしたとおり輪行して帰りました。後輪がクイックではなくスモールパーツもあるので後輪を外さない輪行袋を使います。当然場所は取りますが、電車を選べば輪行できなくもない、という感じ。また、輪行の作業中にうっかりチェーンを触ると手や服が汚れますが、ベルトドライブならそんな心配がありません。
そんなこんなで、ベルトドライブとインター8の組み合わせ、結構イイね!というファーストインプレッションでした。
もっとも、弱点がないわけではありません。
筆者の地元は多摩丘陵の端っこで、坂の街です。どこに出かけるにも坂を通ります。上り坂で力をこめて漕いでいるとき、インター8はなかなか変速してくれません。ギアが重くなるほうには入りますが、軽くなるほうには「カラカラカラ」と音がして入りにくい、もしくは入らなくなります。そんなときは、漕ぐ力を一瞬弱めてやる必要があります。もちろん、失速するほど長い時間弱める必要は無くて、ほんの一瞬でいいのです。まぁ、慣れれば誰でも大丈夫だと思います。むしろ、大トルク時に外装変速でバキバキッとやるよりスマートだと考えることもできます。
そしてギア比についてですが、もう1段軽いギアが欲しいなと思いました。307%というギア比で、リアスプロケットが22Tなのですが、坂の町の住人としては、いちばん軽いギアでも「ちょっと重い」という感じ。川沿いのサイクリングロード等、平地を流している分には現状で十分なのだけれど。
駆動系ばかり目がいきがちですが、フレームも10万円以下のクロスバイクとしては軽快で、なおかつクロスバイクらしい長めのホイールベースで安定感もあります。フロントフォークはアルミですが、タイヤは32Cと太めなので、適正な空気圧で乗っていれば「アルミフォークだから硬い」とか「アルミフォークだから乗り心地が悪い」なんてことはありません。
ということで、そろそろまとめ。繰り返しになりますが、ベルトドライブとインター8の組み合わせは、結構イイです。街乗りメイン、片道10〜15kmくらいの自転車通勤を、ちょっといいスポーツサイクルで……なんてふうに思っている人なら、ordina S8cbはぴったりでしょう。筆者個人的には「普段使いのスポーツサイクルで安い外装変速機をガチャガチャ言わせてる場合じゃないな」という思いを再認識しました。
最後に余談。久々に乗ったインター8は、結構良かったです。でもアルフィーネ8スピードはもっと良くて、アルフィーネ11スピードはすごく良いです(笑)。アルフィーネ11スピード+カーボンベルトの上位モデルの登場を、ぜひ期待したい!
●レビュー製品について
メーカー:ブリヂストンサイクル
製品名:ordina S8cb
価格:89,800円(税込)
製品情報Webサイト:http://www.ordina.jp/s_series/s8cb.html
(須貝弦)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。