101101_001

走り出してすぐにシフトレバーを操作し、ギアチェンジを試みる。あまりの抵抗の少なさと静かさに「壊れてるんじゃないか」とすら思った。しかし、ちゃんと変速はしている。一気に何段か変速させても、その静かさは変わらない。最新の内装変速ってこんなにすごいのか……シマノが自信を持ってリリースした、新型ALFINE(アルフィーネ)11スピードだ。


101101_002

ギアやベアリング等の内部構造を見直し、耐久性をアップさせるためにグリス潤滑ではなくオイル潤滑も採用した、ALFINE 11スピードの内装変速ハブ。ギアレシオは8スピードの307%から409%へとワイド化。それでいて重量は8スピードの1,680gから1,665g(オイル込み)へと僅かだが軽量化されている。


101101_003

ラピッドファイヤープラスのシフトレバー。8スピードはローノーマルだったが、11スピードではスポーツ車向け外装コンポで一般的なトップノーマルへと変更された。マルチリリース、2wayリリース対応。


101101_004

インジケーターにも「11」の文字。


101101_005

カラーはシルバーとピアノブラックの2種類で展開される。


101101_006

オーバーロックナット寸法は135mm。ディスクブレーキ対応(センターロック)。


101101_007

現在のところALFINE 11スピードで組まれた完成車は流通していないので、シマノが試乗用に組み替えた自転車が数台用意された。写真はブリヂストンサイクルの「オルディナ」をベースにしたもの。


101101_008

BD-1に組み込んだ例も(こちらもシマノが組んだ試乗用サンプル)。チェーンテンショナーとしてRDをそのまま使用している。


筆者が試乗したのは、FELTの内装変速モデルを組み替えた物だった(全体像を取り損ねたが、山本修二氏の記事冒頭に出てた)。


試乗は青山界隈で行われた。路地を走りつなぎ、結構な登坂も出てくる。周辺を知り尽くしたシマノ「OVE」のスタッフによる、心憎いルート選択だ。


乃木坂トンネルを集団で通過する。台数の関係で全員が11スピードではなく、一部8スピードも混ざっているが(途中で自転車をとっかえっこする)、付き添いのスタッフ以外は全員内装変速機の自転車。トンネル内で変速操作をしても、コクッコクッというシフトレバーの動きを指先に感じるだけで、外装変速機&STIのようにガチャチャチャ……という音が響き渡ることはない。冒頭書いたように最初は「壊れてるんじゃないか」と思ったくらいに手応えの無さを感じたが、すぐにシフトアップが楽しくなった。人数が多かったのであまりスピードは出せないけれど、頭の中では「ウルトラスムーズ!!」と連呼しながらフィーリングを楽しむ。


ALFINE 11スピードは、45×23Tで組んだ場合、外装変速に換算すると24×23Tから53×13Tまでをカバー。8スピードよりワイドになった分を、11スピード化で補っている。しかも常用する中速域が接近しているようで、街中を流す分にはなんとも気持ちが良い。


ちなみに内装変速機には「踏みながら変速できない」という欠点があった。しかし、ALFINEは踏みながら変速できる。少なくとも、平地を巡航している分には(後述)。


信号で止まる。前のライダーはOVEの方で、外装変速の自転車で引率。変速途中で停止してしてしまったようで、いったん後輪を浮かせてクランクを回し、変速させていた。一方、内装組はそんな手間など無く、停止中でも変速操作が可能。このあたりは(ALFINEに限らず)内装変速ならではのメリットだ。


細い激坂区間に入る。軽いギアでクルクル回しながら走っている分には、ペダルを踏みながら変速することは可能だ。ただし重めのギアを力強く踏んでいると、さすがに変速が遅れる。変速時の音とショックもあった。また、8スピードのほうでは、坂道でのダンシングの間変速できないという場面が一度あった。「ALFINE 8スピード&11スピードは踏みながら変速できるが、大トルクは苦手である」ということは間違いない。外装変速機よりはるかに静かでスムーズであることも間違いないが、慣れは必要だと思った。大トルクをかけるようになる前に、早め早めにギアチェンジしていけばよい(そしてそれは結局外装も同じ)。


試乗から帰ってきたときには「欲しい」と思った。時間の都合で試乗せず帰った方々は、本当にもったいないことをした。普段使い+アルファのスポーツサイクルは、もうALFINEでいいんじゃないか。外装変速機をガチャガチャ言わせてる場合じゃない……大げさかもしれないけれど、それくらいのことを思っていた。価格の面から言えば、ALFINEの11スピードはリアの内装変速ハブだけで希望小売価格41,226円(税込)であり、これは8スピードのほぼ倍。ALFINE 8スピードやNEXUSインター8より良くなっているのは当然と言えば当然だ。しかし、全然高くない。この価格でこんな上質なフィーリングとスマートさが手に入るなら、全然高くない。重たい、ホイールがナット止め……それも大した問題じゃない。


この発表会に来ていた某ディストリビューターの方から聞いた。「内装というだけで否定的になる営業やショップが多い」と。「なんてもったいないことをしているんでしょうね」と話した。でも実際、内装変速のクロスバイク等は出ては消え、出ては消え……というケースが多いのは残念だ。


こんなに素晴らしいALFINE 11スピードだけれど、国内でパーツとして出回るのは少々先になりそうだ。欧州で大人気なのだという。国内に投入される完成車へは、数社が採用を表明しているとのこと。おそらく、今度のサイクルモードインターナショナルで出展されるのではないかと期待している。

140602_alfine

参考リンク:

シマノ展示会(9/22) – PRIDE ONE 営業日誌

●内装11段変速となってALFINEが登場●:ワイズロード大宮

内装11段変速 試乗速報 山本修二のサイクリング情報「お気楽自転車散歩日和」

シマノ ALFINE(アルフィーネ)・11スピード


(須貝弦)











Road2010_top_mini