週末にUCIシクロクロス世界選手権が行われ、日本でも熱烈なシクロクロスファンが盛り上がっていました。シクロクロスとはダートかつ障害物のあるコースを走る冬場のレースで、シクロクロスバイクというそれ専用のジャンルがあります。一見ロードバイクに似ていますが、ダートを走るので太めのタイヤが装着できるようになっているのと、泥詰まりに強い「カンチブレーキ」というブレーキが使われているのが特徴です。
で、このシクロクロスバイク、いろいろなポジションが取れる「ドロップハンドル+太めのタイヤ」という組み合わせから、ランドナーが少なくなった昨今、サイクリングやロングツーリングを楽しむための自転車としても一定の人気があります。純競技用ではなく、ツーリング用途に振った「シクロクロス風のツーリングバイク」や、両方を兼ねた性格のものも増えました。そんな自転車たちをいくつか紹介したいと思います。
まず例として、GIANTのシクロクロスバイクの中でトップグレードであるTCX 0(税込252,000円)。
アルミフレームにカーボンフォーク、カンチブレーキ、36/46Tのフロントクランク、700x30Cのタイヤ等々、シクロクロスバイクとして一般的な構成です。
一方、同じGIANTでも安価なグレードであるTCX 2(税込105,000円)はというと。
こちらのフレームやフォークにはキャリア用のダボ(取り付け穴)があったり、TCX 0では1つしかないボトルケー台座がTCX 2では2つだったり、さらには補助ブレーキレバーもあったりと、ツーリング用途への配慮が見られます。ちなみにシクロクロスレースではボトルを使わない(禁止されてるそうです)ので、シクロクロスバイクの上位モデルでは、トレーニングのときのことを考えてボトルケージ台座は1つあれば十分……という考えのことが多いようです。バリバリのレーサーだと台座すらないこともあります。
シクロクロスバイクのような構成ながら、ツーリングに主眼を置いた「シクロクロス風のツーリングバイク」としては、ビアンキのLUPO(税込115,500円)などが挙げられます。
シクロクロスレーサーはアルミフレームが多いですが、このLUPOはスチールフレームです。
ブリヂストンのアンカー・スポーツユーティリティにもC9(税込99,800円)というモデルがあります。
こちらはフロントトリプルですし、より明確に「ツーリング車」であることがわかりますね。
JamisのAurora(税込109,000円)も同じ位置づけです。
MASIのSPECIALE CX(131,250円)なんかもいいですね。
乗り心地の良さを求めたい、ノンビリは知りたいというならスチールがいいでしょう。もっとも、アルミフレームの場合でもタイヤの選択と空気圧であるていど乗り心地は確保できると思います。
シクロクロスバイクやシクロクロス風のツーリングバイクは、強いて言えばカンチブレーキがVブレーキのようには効かないのが弱点。調整がものをいうので、ちゃんとしたショップで購入されることをオススメします。完成車にあまりにも効かないものが付いている場合は、シマノのカンチブレーキに交換するなどしたほうが良いかもしれません。
近年のスポーツ自転車ブームではロードバイクばかり目立っていますが、こんなジャンルもあるんだということを気に留めていただければ幸いです。
(須貝弦)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。