9月22日〜23日の2日間に渡って福島県いわき市の21世紀の森公園で開催された、「全日本実業団クリテリウムINいわき」。台風の影響で時おり強い雨が叩き付ける中、BR-1のレースを制したのは愛三工業レーシングの西谷 泰治選手でした。トップの画像は、BR-3のレースの様子。このときがいちばん雨が激しくて、見ているのも大変といった感じ。走っているほうも、そしてサポートする関係者も大変です。
BR-1のほうは、レースの中盤以降シマノの山本選手、ミヤタスバルの柿沼選手、そして優勝した西谷選手が積極的な逃げを展開し、後続集団との差がみるみるうちに広がりました。そして残り5周の段階で後続集団に1分20秒以上の差を付けてしまい、「先頭の3人が通過してから追走集団がやってくるまでの時間」よりも、「追走集団が通過してから先頭の3人がやってくるまでの時間」のほうが短くなります。こうなると勝負は3人に絞られますが、柿沼・山本・西谷の3人では、スプリント力のある西谷が圧倒的に有利。観客が注目は「誰が勝つか」よりも、もう1つの「ある問題」のほうにありました。
その問題とは、先頭3人がフィニッシュラインを迎える頃、ちょうど後続集団に追いついて交錯する可能性があることでした。いわきクリテでは、最終周回だけコースがショートカットされるのですが、ショートカットしたあと通常の周回コースに復帰するポイントが、フィニッシュラインの直前となっています。タイム差によっては、そのポイントで先頭3人と集団がかち合ってしまう、というわけなのです。
実際にそんなことになったら大変です。運営側がどのような判断を下すのかみんなが見守る中、先頭の3人がフィニッシュライン直前のショートカットコースに姿を見せます。やはり勝つのは西谷選手か!? そのとき、狙ったかのように通常コースのほうから集団が! 運営の方が赤旗を振って笛を吹きながら通常コースに飛び出し、メイン集団を強制ストップ(かなり際どいタイミングでした)。そして西谷選手が両手を挙げてフィニッシュラインを通過。柿沼選手は2位、山本選手は3位でした。
そのあと集団はゆっくりと動き始め、その集団に対して最終周回に入ることを知らせるジャンが鳴りますが、再スタートをする選手はほとんどナシ。集団の中から「終わり終わり! ヤメー!」と怒号が飛ぶという、なんとも珍しい結末でした。4位以降は1lapで着順はナシという結果になったようです。「でも誰かがもう1周行ったなぁ」と思っていたら、ミヤタスバルの三船選手と高野選手のようでした。
見てる側としては、最後まで走ってほしかったです。残りの全員が集団でゴールするとか、何かしらやり方はあったと思うのですが……。もう1つ付け加えるなら、こういうことが起こる可能性は走る前からわかっているはずです。レースの実況を聞いていても「起こりうること」と認識されているように見えました。「じゃぁ、なんでそのままやるの?」というのが、見ている者としては疑問です。
なお今回のレースで「JJカップ」(実業団レースのシリーズポイント)も終了。愛三工業の廣瀬選手が1位となりました。
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。