先日、都内の大きな自転車店に入ったら、何年も会っていない知り合いとばったり遭遇しました。
彼が近年スポーツサイクルにハマっているのは知っていたのですが、いわゆる「相当なハマりよう」ってやつで、さっそく店内でいろいろなパーツを眺めながら、あーでもないこーでもないと話をし、そのあと「軽く、行きますか」とか言いながら、バーで3時間くらい自転車の話ばかりしていました。
「周りに同じような趣味を持っている人がいないからさ、こんなに自転車の話ができて楽しいよw」
彼はそう言いました。
そう、自転車屋さんに行って商品を見たり、そこで人と会って自転車の話をしたりとかって、乗るのとはまた違った楽しみがありますよね。
ただ、彼の話を聞いてひとつ気になったのが、どうやら、どこかひとつのショップの常連というわけではなくて、いろいろなお店を渡り歩いているような感じなのです。彼は自転車店、とくにプロショップというものに入りにくさを感じていたのでした。
もちろんショップの重要性は理解していて、量販系のショップも海外通販も経て、多少の勉強代も払いつつ、メンテナンスを任せるショップについては、とりあえずは「ココ!」と決めたショップがあるそうです。それでもやはり、ショップの持つ雰囲気、ショップが提供する技術やサービスの差異、ショップが醸成するコミュニティなどいろいろひっくるめた上で、漠然とした「入りにくさ」を感じているようでした。
想像ですが、ここ数年スポーツサイクルをはじめた人の中には、同じように自転車店というものに対して「なんか、入りにくい」と感じている人も多いのではないでしょうか。単なる食わず嫌いではなく「入ってみたけど、利用してみたけど、やっぱり無理かも……」みたいな人も、いるのではないかと。
実際のところ、個人経営のプロショップと称されるような自転車店(の一部)は、陰気臭いとか、人間性にクセがある(ありすぎる)とか、いくら趣味性が強いモノだからってその接客はどうかとか、その品揃えはなんなんだとか、いろいろあるわけです。じゃぁ量販系はというと……やっぱりアレだったりするケースもあるわけで。
そういったものが「自転車は特殊だから」という一言でやり過ごされてきて、スポーツサイクルの間口、裾野が広がっていることに対してまったく追いついていません。そして「自転車店ってやっぱり入りにくい」「自転車は好きだけどどっちかっていうと自転車店は好きじゃない」といった人を生んでいる面があります。
自転車業界の一部には「それは客の問題だ」という認識があるのも、またややこしい話で。
もちろん、良いショップもあります。確かな技術、優れた接客ができるショップもあります(むしろそういうショップの方が人にお客さんがつくので、絞られた品揃えでもみんな納得して買っていく)。
「それで?どうするの?」と言われても何のソリューションも持ち合わせていないのですが、やはり自転車店は大切な存在だし、良いこともいっぱいあると思います。うじうじ悩んでいるくらいなら、思い切ってショップに行ってみようよ、相談してみようよ……と。ショップに行けば問題が解決できるし、情報も得られるかもしれないよ……と。
一方で「苦手なんだよね、自転車屋」という気持ちも、すごくよくわかります。
すごくよく、わかるんです。わかる。
「このギャップ、どうしたら埋まるんだろう?」
ほろ酔い気分の帰り道、ずっとそんなことを考えていましたよ!……っていう話で、とくにオチはありません。
※写真は本文と関係ありません
(SUGAI Gen)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。