かつて長い間、計画がありながら工事が凍結されていた「マッカーサー道路」こと、環状第2号線新橋〜虎ノ門間が、先日開通しました。
GHQのマッカーサー最高司令官が建設を命じたという伝説がある「マッカーサー道路」が完成した。3月29日午後3時に開通する。都市計画決定から実に68年もかかった計算だ。東京都港区にある虎ノ門〜新橋間の約1.4キロが結ばれることで、都心の慢性的な渋滞の解消が期待されるほか、2020年東京オリンピックでは選手村と各競技場を繋ぐ大動脈となりそうだ。
引用元: マッカーサー道路、68年かけて完成 東京オリンピックの大動脈に.
新橋から虎ノ門の特許庁前までを一気に結ぶ地下部分は、手前の汐留あたりの区間も含めて「環二通り」、そしてあわせて整備された新橋〜虎ノ門間の地上部分は「新虎通り」と名付けられています。
今回は、環二通りの汐先橋から、新虎通りを経由して特許庁前に至るまでの区間に整備されている、自転車通行環境をチェックしてみました。
まずは今回の走行区間です。
より大きな地図で 環二通り・新虎通り を表示
まず、汐先橋交差点から汐留交差点までは、とくに自転車のための通行環境と呼べるようなものは用意されていません。汐留交差点の先から現れます。
歩道に付帯しているため車道からアクセスできない上に、途中からやっとここに入れたと思ったら、JRのガードですぐに終わりました。いったん車道に出て、国道15号を渡ります。するとまた、こんな空間が現れます。
ご覧のように、1つめの画像同様、歩道の一部が区切られて、自転車道(のようなもの)になっています。
相互通行で、車道および歩道の歩行者の空間とは、バリケードで区分されています。歩行者が歩く空間ともども、路面は荒れているところもあり、まだ「とりあえず」の姿ではあるようです。ところで上の写真にも、「自転車専用・ここまで」の標識がありますね。
交差点では、自転車専用の空間が途切れます。仮に前方の信号が青でも、横断歩道の信号待ちをしている歩行者が滞留しているので、スムーズに通行することができません。
横断歩道には、自転車横断帯があります。なお、警視庁は自転車横断帯を撤去する方針を示していますが、歩道に自転車通行帯のある交差点はその対象外。だからこうやって、新設されるケースもあるわけですね。
交差点を渡ると、「自転車専用・ここから」の標識とともに、自転車専用の空間が現れます。途中、虎ノ門ヒルズを避ける場所が裏道みたいになったり、桜田通りに出たりしますが、基本的には「自転車専用・ここから」「交差点、自転車横断帯」「自転車専用・ここまで」の繰り返しです。
逆方向、特許庁前側から通行しても同じです。
交差点の手前で自転車専用の空間がなくなり、そのまま歩道に接続される構造ですから、このように、歩道の自転車通行可(自転車及び歩行者専用)を示す標識と、自転車専用を示す標識が同居することになります。
はいここまで〜。このまま歩道に接続されているのだから、歩道は自転車通行可である必要があるわけですよね(私は車道に出ますが)。
ただ、虎ノ門ヒルズを迂回する区間の一部では、
こんな空間もありました。
まぁ、そんなわけで、国道15号との交差点まで帰ってきました。
ちなみに歩道のほうでは、自転車専用の空間が終わっているうえに、「自転車及び歩行者専用・ここまで」の標識があるのですが、その先の交差点には自転車横断帯もあるし、よくわかりません。
とにかく交差点を渡って、汐先橋まで行きます。
歩道の自転車通行可(自転車及び歩行者専用)を示す標識と、自転車専用を示す標識が、ごちゃごちゃとした構造物に隠れています。そもそもガードレールに隠れて自転車専用の空間が見えず、私は車道を直進してから気づきました。
途中から自転車専用の空間に入りましたが、すぐ終わるし、直進も右折もできないし、自転車降りてデッキ行けとか書いてあるし、そのまま歩道の車道寄りを行こうにも、
どうしろと。
……という、具合なのでした。
さて、もう一度この画像を貼ります。
「自転車及び歩行者専用」の標識が、ある。「自転車専用」の標識と、自転車道らしきものが、ある。そして、車道がある。確かにあるのです。
道交法上、歩道上を自転車で通行しても構わないことは、わかります。
では自転車専用と示された、自転車道みたいなのは? もちろん、自転車で通るための空間であり、自転車で通行しても構わないことはわかります。
※2014/5/14追記:なんと、この自転車通行環境は道交法上の自転車道として整備されていることがわかりました。したがいまして、下記一部記述を取り消しさせていただきます。補足記事はコチラ。
<<<<<<<< 取り消しここから >>>>>>>>
しかしこれは、少なくとも道交法的には、自転車道みたいなものであり、自転車道ではありません。道交法を引用します。道路交通法第一章「総則」より。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(中略)
三の三 自転車道 自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。
引用元: 道路交通法.
『自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう』
『車道の部分をいう』
今回紹介した環二通り・新虎通り上の自転車専用の空間は、物理的に分離するという意図こそ見受けられるものの、すべて歩道上に設置されていることから、これは道交法の言うところの自転車道には該当しないことがわかります。
つまり、道交法的には自転車は車道を通行しても問題ありません。
歩道上に整備された自転車通行空間であることは、東京都の資料からも明らかです。
いわゆる、道路法上の自転車道と道交法上の自転車道の違いってやつですね(道路標識上は区別が無い)。環二通り・新虎通りのコレも“ある意味”「自転車道」ではあるわけだ。
<<<<<<<< 取り消しここまで >>>>>>>>
※訂正取り消し部分の補足記事はコチラ。
少なくとも現在の交通量では、新虎通りの車道を自転車で通行しても、危険は感じません。※2014/7/14追記:危険は感じないけど真似すると普通自転車においては道交法違反になります。
新橋〜虎ノ門間においては、通過交通のクルマは地下を通りますしね。
というわけで、往復してみて私は、考え込んでしまいました。
3,000歩くらい譲って、広い歩道として整備された空間の一部を物理的に区切って自転車専用の通行空間とすることは、従来の「歩道上を緑っぽいグレーと赤っぽいグレーに色分けして、自転車と歩行者と視覚的に分離したと言い張る」という施策に比べれば、マシになったと言えるでしょう(もしかしたら、最初は従来の視覚的分離を行う予定だったのかもしれません)。このことに関しては、私個人的にはかすかな望みを持っています。
しかし、このやり方であれば、信号制御も含めて交差点処理をよっぽど考えないといけませんし、法的に見て「歩道も歩道上の自転車専用空間も車道も全部通行できる」というのはカオス以外の何ものでも無いのです。したがって総合的には「ダメじゃん」「舛添さん、これ違います」ということになってしまいます。
これだけの幅があれば、クルマと自転車と歩行者をそれぞれ構造的に分離した道路が、作れたはずなのに。
というわけで、すみません、褒めるところあまりありませんでした!
最後に、動画を貼っておきますね。
(Gen SUGAI)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はアルミのロードバイク「TREK Domane AL3 DISC」。
丁寧なレポートのおかげで新虎通りの現況がよく見れました。ありがとうございます。
しかし、これは・・・残念な状態ですね。自転車の通行に関してはまったくツギハギで、自転車をどう通らせたいのか意志が感じられません。(意識は分裂?)
とくに交差点の処理はガラパゴス状態。(思考停止?)
工事途中であるための応急形態であると思いたいですが、なんか嫌な予感が抑えきれない現況となってしまっています。
道路設置者の元には完成イメージ図があるのでしょうが、どんな風になっているのでしょう?
このままでは「マッカーサー」も迷惑顔では?